現在の障害者自立支援法では、入所施設を利用できる障害程度の区分判定は区分4から区分6(区分6が最重度の障害)となっている。「障害が重い人は入所施設」、軽い人は「グループホーム」という区分けがなされている。
障害が重い人が入所施設の利用者の中心になることには異存がない。だが、現在、障害の程度判定基準が知的障害を十分に考慮したものになっていないことを考えると、「障害が重い人は入所施設」という考え方にはいささか問題があると言わざるを得ない。
現在の判定では知的障害の場合、問題行動がある人が区分判定では大きな数値に判定される。判定に携わる専門官は、問題行動があるかないかが判定の決め手になるという。となれば、今後、入所施設の利用者は問題行動をもった人が利用する傾向となることは否めない。
もちろん、入所施設は高い専門性を標榜しており、問題行動の解決のためのプロフェッショナルになることを社会から期待されている。その意味では、入所施設が問題行動の解決のために環境を整備し、その技術を磨くのはあたりまえである。
ただ、問題行動を維持しているのはその人が生活している環境である。入所施設に移ればしばらくして問題行動が消失するかもしれないが、問題行動が消失したからといって、もとの生活場面に戻った場合に問題行動が再発しない保障はどこにもない。むしろ、問題行動は生活している環境で起こり、維持される。
問題行動を解決するための支援は生活の場で行うのが基本だ。すなわち、問題行動の解決の支援は、本人だけではなく生活環境そのものの変容も含まれるべきである。知的障害者の地域生活支援が成功するか否かのポイントは「重篤な問題行動をもった人は入所施設へ」という考え方を乗り越えるところにある。
ところが現在、入所施設から地域生活への移行支援は退所後1回でわずか5000円。交通費である。この単価ではインセンティブは働かず入所施設からの地域移行は促進されない。本来は、半年間などの一定期間、入所施設から地域生活への試験移動期間に遠隔的な介護や支援が行われ、それに対して支援費が入所施設に支給されることが望ましい。
問題行動は永続的な行動ではない。その人が現在生活している環境の変容と定期的なメンテナンスを適切に行えば問題行動を減少させたり緩和したり、他の望ましい行動と置き換えることが可能である。今、就労移行支援が脚光を浴びているが、今後社会福祉法人の施設において地域生活を維持し質の高いものに発展させていく仕事は施設に本来求められる仕事である。地域生活の場面で問題行動を解決し、QOLを維持するための介護(タスクフォース)に光をあててこそ、障害者自立支援法は地域生活を支援し、強固で利用者側に立った制度になる。