先日名東福祉会の家族会主催でシンポジウムが行われました。コーディネーターは地域生活支援センターの小島所長、シンポジストは各現場の所長たちということで、たいへん有意義なシンポジウムとなり良かったと思います。家族会が参加して福祉目標について研鑽を深める事ほど地域福祉にとって重要な事はありません。
生活の質(QOL)を高める事が最も基本的かつ重要な福祉目標です。ところが生活の質はとらえる事がたいへん難しい概念でもあります。
生活の質は本人の行動だけではなく、生活にかかわる人たちの行動や法律、政策によっても影響をうけます。さらに本人が働いている職場や施設など組織の行動にも影響を受けます。近年、本人の生活の質を調査する場合には、できるだけ本人とかかわりのある人たちが参加して情報を得ることが望ましいとされるようになりました。障害者福祉の現場ではそれだけにとどまらず、家族会や地域の社会資源のスタッフも参加して本人の生活の質を考える事が必要であるとされています。
名東福祉会では、伝統的に「家族と職員が協働して本人の生活を考える」という事を大切にしてきました。家族が施設の目標設定に参加する事は、目標が広がり、何を実現すべきなのか多様になりすぎて経営が難しくなる恐れもあります。
もちろんいちばんよくないのは家族や職員の参加がない状況で経営方針が決定される事ですが、参加者の意見が広がり、優先順位が決められずにリストアップされた問題点が全て目標となってしまう事も経営に害を及ぼします。
本人のQOL向上について、よくよく話を突き詰め、予算や資源の状況に関して相互に理解を深めていくと、自然に今やるべき重要事項が絞られ、優先順位が決まってくるという事があります。名東福祉会の30年の実践がその事をよく語っていると思います。
ここで家族会活動のプロセスのあるべき姿について簡単に述べておきます。
1 家族会による生活の質向上のための運動の高まり
2 家族が掲げたニーズ(QOL)は現場の問題と関係があるのかを調査・選択
3 何を優先させるべきなのかを専門家を交え、委員会・理事会で対話検討
4 理事会・評議員会による計画の立案と決定
5 福祉サービスの実行開始と社会資源の横断的調整
6 新しい福祉活動の開始
7 本人のQOLの変化の測定
8 新しいニーズの出現と問題の意識化
9 より多くの参加者によるニーズ調査
10 資源開発のための家族会活動の拡大
もちろん、今では歴史が長い法人になってしまった名東福祉会の場合であっても、まだまだ各プロセスがスムーズに運用されているわけではありません。改善すべき点は多々あります。
これから、家族会と職員が、ますます協働してこのプロセスのひとつひとつをより洗練されたものにしていく事が必要です。それによって本人のQOLを改善していきたいと考えています。