人と技術

社会福祉法人は後3年くらいの間に変化できなければ確実に滅びる。これからの3年間は人間力と技術力を高める3年間となる。

人間力とは利用者を大切にする力だ。現場でこの力をつけるためには、常に利用者の幸せを優先することだ。利用者は個人ごとに幸せが異なる。ひとりひとりに合わせて満足を積み重ねていく人間力が求められる。利用者を大切にする思想は組織の倫理性によって大きく左右される。社会福祉法人として生き残るためには法人に高い倫理性が求められる。

どんな分野のビジネスでも技術力が組織の力となる。福祉分野のサービスは人間によってもたらされる。技といってもいい。介護保険との統合という危機を前にして、これから生き残るためにはスタッフの教育・研修によって技術力を高めることが必要だ。

では知的障害福祉分野の技術はどういう形で高めていくことができるか。

技術は日ごろの実践の中で、努力の積み重ねによって成就される。現場に問題があれば改善し、少しでも安全性を高め、少しでも効率がよい方法を選ぶ。いい方法があれば貪欲に取り入れることが肝要である。問題があれば正直に公表し、それを直す。そのために職員が自ら現場を変える仕組みを導入していきたい。

知的障害者分野の介護は、他の福祉でみられる通常の介護に加え、就労支援がある。知的障害分野で身につけた技術はどの分野の介護にも応用が利く。反面、知的障害分野の介護はとてもひとりではできない。だから知的障害者ケアはチームでやる。

行政機関や医療機関、教育機関との連携も必要である。行政と連携を進めれば必ず一体感がでる。私たちは行政と馴れ合いになるわけではなく、また反目しあうこともない。時には激しい議論をすることもあるが、これからも行政との連携を最重点課題として地域の中で確固たる役割を果たして行きたい。

家族との話し合いも大切だ。だが、これはもっとも難しい。だから知的障害分野では特にコミュニケーション技術が大切だ。

自立支援はことばを変えれば問題解決支援である。問題の解決のためには本人の行動を変えることもさることながら、まわりの人の行動を変えることも大切だ。支援者自身が変わることができなければまわりの人を変えることは難しい。技術を高めるためには変化が重要だ。

名東福祉会は新しく、児童デイサービス事業を行う。もちろんニーズがあるから取り組んでいくわけだが、この分野で新しく迎える療育スタッフは名東福祉会の支援技術を大きく前進させてくれるだろう。職員教育・研修の中核的な機能として位置づけ、介護スタッフ全体の心理的、社会的な問題解決力を高めてまいりたい。

技術を磨いてもそれに見合う報酬がなければ人は長くこの世界にとどまらない。もちろんお金が報酬の全てではないものの、賃金は重要な要素ではある。ところが肝心の介護報酬単価がこれから高まることは予想しにくい。国や自治体に対して要望をあげていくことは当然としても、現実的な収入アップの道を考えねばならない。

それには、やはり、経営を効率化しながら利用者が求めるニーズに果敢に応えていくことだ。ケアホーム実現と就労継続支援・就労移行支援への取り組みがこの3年間の最大の課題となる。特に、就労継続支援は経理方式も変わり、利用者の収入アップだけではなく職員の収入アップや生活の質の向上にもつなげることもできる。大きな可能性をもっている道なのだ。名東福祉会はこの分野が特に弱い。これを変えていくことが生き残りの必須条件ともいえる。

最後に、さきごろ社会保障審議会で提言された、今後求められる「介護福祉士像」について紹介しておく。
今後、介護福祉士の国家資格要件はこの路線に従って改訂されていくことは間違いない。

 1 尊厳を支えるケアの実践
 2 現場で必要とされる実践的能力
 3 自立支援を重視し、これからの介護ニーズ・政策にも対応できる
 4 施設・地域(在宅)を通じた汎用性ある能力
 5 心理的・社会的支援の重視
 6 予防からリハビリテーション、看取りまで、利用者の状態の変化に対応できる
 7 他職種の協働によるチームケア
 8 一人でも基本的な対応ができる
 9 「個別ケア」の実践
10 利用者・家族、チームに対するコミュニケーション能力や的確な記録・記述力
11 関連領域の基本的な理解
12 高い倫理性の保持