障害者自立支援法の改革のターゲットは授産施設と入所施設だ。そのため、いやおうなしに新しい雇用型の就労継続支援やケアホームなどについての関心が高まっている。
ただ、就労を目標としていない重度の障害者の場合について、いまひとつ関心が高まっていないことが気がかりだ。もともと、障害者施設には重度の障害者が多く、生活介護のあり方が福祉サービスの品質を左右することに変わりはないからだ。
生活介護サービスの品質をこれまで以上に高めるために、生活介護について整理しておく必要がある。ここで、日中生活のニーズと受けられるサービスの関係を見てみよう。
障害がある人のニーズを3つのタイプにわけ、
1 介護を受けたい→生活介護
2 生活訓練を受けたい→生活訓練→B型・A型
3 働いて自立したい→就労移行→A型・一般就労
というルートでケアを進めていく形だ。
厚生労働省が障害者自立支援法を実施するにあたって事前に調査した区分判定の資料をみると知的障害者の場合、障害が重いほうの区分4・区分5・区分6の人の合計は53.1%となっている。
「生活介護」は主に重度の人たちが利用するサービス。区分4・区分5・区分6の人が50%を超えるならば、その人たちが利用することが多い生活介護サービスのあり方は非常に重要である。名東福祉会の利用者について考えてみても生活介護のニーズが高いことが予想される。
では日中の生活介護とはどんなサービスなのだろうか?
生活介護は重度の障害者が対象となる。支援領域は、大きくわけて3つだ。
1 健康の維持・増進
2 日常生活動作の介護
3 創作的活動
もちろんこれまで施設で行われてきた活動の内容そのものだ。だが障害者自立支援法は障害者ケアマネジメントについて厳しい規定を設けており、今後は生活介護の目的や内容、サービスのコストや効果、利用者への説明についてなおいっそうの工夫を行い、明確化していくことが必要だ。
■支援者は地域生活を想像するシェフ
そこで、生活介護を行うにあたって必要な技術をつぎにまとめておこう。
今後生活介護の分野で重要となってくる技術は
1 ケアマネジメント技術
2 健康管理に関する技術
3 問題行動の減少させ、目標行動を増加させる行動科学に関する技術だ。
私は、特に目標行動を増加させることに関する行動分析技法が生活介護の品質を左右することになると考えている。生活介護というと、他のサービスに比べて華々しさはないが、生活介護技術は他のすべての就労支援技術の基礎技術でもある。
障害がある人が質の高い地域生活を送る上で重要な技術であるとともに、これらの技術を駆使して彩と味わいのある地域生活を想像するのが地域生活のシェフたる支援者の役割となる。
■生活介護は決して分離した活動にはならない
今回の自立支援法によって、目的別の集団ができることになり、就労支援活動と生活介護の人が分離していく傾向になるのはいたしかたがない。
ただ、だからといって生活介護で行う活動が、他のA型やB型の就労支援活動とまったく無関係になる必要はない。A型の就労継続支援で必要となる作業の「下請け」を生活介護の「創造的活動」で行ってもかまわない。むしろ、そうした形で連携を行うことによって生活介護サービスで行う作業を生み出すことも必要だと思う。
創作活動は日中生活の鍵となる中心的な活動であり、この時間がないと、実際のところ、日常生活の世話だけでは時間がもたないし、問題行動も多発することになる。
■創作活動を活性化するために
重度の人たちの生活を彩る「創作活動」。しかし、創作活動にも発表の場が必要で、ただ単に作業を行うだけならばなかなかモチベーションが維持されにくい。
そこで必要となるのがイベント。日々の創作活動の成果をどういう形にしていくのかがポイントになる。
名東福祉会の場合、伝統的な陶芸など見る人をあきさせない創作活動が豊富にある。ときには力強いフォルムで圧倒する「芸術作品」ともいえる作品もできあがる。
名東福祉会ではこうした「創作活動」によって生まれたも土の塊を焼いて建物の陶壁にした。これが収益に結びつくこともあった。それはそれで生活介護のありがたい副産物だ。
このホームページのリンクでも紹介した鹿児島のおおすみ園の農園の中のあちこちに、スペイン風の壁がある。この壁に大小さまざまな丸石が埋め込まれている。これらはみな、重度の障害がある人たちが作った作品だった。美しい農園の景観に深い味わいを添えている。
創作活動を活性化するためにはイベントが必要だ。名東福祉会はフロール展などの展覧会に出展する活動を行っているが、これからも続けて行きたい。