障害児行動療育センター(仮称)の設立

名東福祉会は2007年4月に「愛知障害児行動療育センター(仮称)」を設立すべく、目下、準備に入っている。
当面、定員10名の規模でスタートし、成果やニーズに応じて順次拡大していく計画だ。
これにより、レジデンス日進は入所機能と療育機能を兼ね備えた多機能型の施設として新しく生まれ変わる。

行動療法はこれまで、日本においてはあまり普及してこなかった。
ところが、行動科学、行動分析、行動療法はアメリカ、イギリスなどでは広く普及しており、日本では遅れとったといわざるを得ない状況であった。
だが、近年、厚生労働省も行動科学に対する評価が大きく変わり、健康増進に関する政策では行動科学に基づく政策が採用されるように変わってきている。
医療改革や福祉改革によってエビデンスに基づく医療(EBM)が求められ、コストに見合った成果が問われる時代に入ると、「成果を出せる療法」に眼が向くのは当然といえば当然だ。

行動療法が見直され、普及のきざしが見えてきたとはいえ、現状では行動療法を受けることができる機関は少ない。
利用者として気軽に行動療法を体験し、相談を受け、親子ともども訓練を受け、家庭でも支援を受けながら訓練を継続していくことをしたくてもできないしくみだった。これまでの制度のもとで、無理に療育機関を開設すると料金は幼児のこどもを持つ親にとっては気が遠くなるほど高額になってしまう。これでは障害児の日常的な問題解決のために療育を受けるというイメージからあまりにも遠い。制度に裏付けられ、万人が利用できる療育機関が必要だ。

障害児分野においても正統派の行動療法が利用できる療育の場がほしい。児童の療育の品質は障害があるこどものその後の人生の「生活の質」を大きく左右する。

近年、行動療法によって成果があることがはっきりと証明されている。ならば、これを普及するよう、市町村はその福祉計画に明確な数値目標を設定して努力するのは当然なのではないだろうか。それも、日本で数箇所というようなレベルではなく、地域のなかにあたりまえに療育センターが存在し、親子が気軽に通園して訓練を受けられるようにしてほしい。

児童行動療育センターが設置されることにより、こどもたちだけではなく、施設を利用しているすべての人が恩恵を受けるはずだ。問題解決の行動分析はこどもだけではなく、大人にも応用可能だ。障害が重い人たちへの自立訓練や、雇用の場への就労移行訓練などすべての分野で活用されるべき技術である。

障害者自立支援法により、保育所や小学校に通園・通学しながらこうした専門的な治療教育サービスを受けることができるようになった。
この法律が導入されなければこうした療育サービスを提供する側のシーズと、行動療育を受ける側のニーズが一致することはなかった。
いろいろ問題があり批判が強い法律ではあるが、障害を持つ児童の療育について可能性を広げた点については素直に評価したい。

今後、行動療法の専門技術を有するスタッフがこの地に集まり、障害児の行動療法の先端的な療育実践の場として発展し、多くの障害があるこどもたちや家族が利用し、行動の問題や課題を少しでも解決できていくことを期待してやまない。