レジデンス日進は完全個室でなる10人(ショートステイ用に予備室が7室ある)ユニットが4つ集まったユニットケアを行っています。各ユニットには食堂、居間、トイレ、風呂を備えています。桐材と腰壁にはふんだんに桐を使い、珪藻土を厚く塗った天井と壁、外断熱の役割を果たす煉瓦とあいまって冬暖かく、夏涼しい快適な空間となっています。それだけではなく、利用者や家族が全体が集まることができる食堂や地域の人々との交流を目的としたホールも備えています。仕事をする空間も居室とは別に施設内外に備えていて、職住分離ができている上に、職住が離れすぎてもいない便利な住まいとなっています。
各ユニットはそれぞれ完全に分離しているため、実質的にグループホームが4つ集まった集合グループホームといっていいと思います。日本でもおそらく屈指の快適さを誇ります。もちろんいろいろな問題点はありますが、通常の入所施設と比べ進んだ「住まい」だと思います。ただ、現状では人件費が多くかかることは否めません。運営は非常に厳しいものがあります。
2010年度の名東福祉会の決算報告書からレジデンス日進の数字を拾います。レジデンス日進の総収入は181,678千円。一方、総支出が179,089千円となっていて、一見黒字ですが、よくみると、利用者の家族から、運営協力金(寄付金)を12,254千円いただいています。寄付金を除く収入は169,424千円で、もし協力金をいただけなければ、年間9,665千円の赤字になっていたわけです。支出の内訳は、
1 人件費 132,629千円
2 事務費 18,883千円
3 事業費 26,564千円
4 利息支払 1,011千円
でした。人件費が74%! 一般企業ならとっくに倒産。社会福祉法人の施設でも50%~60%が適正ですから、レジデンス日進の人件費の高さは極めて問題といえます。ただ、通常の施設よりも人員が多いのはユニットケアだからです。職員は24時間体制で勤務しなければなりません。職員数は所長を含め42名配置されていて、管理職や社会保険も含めた人件費を単純に割り出すとひとりあたり3,157千円となります。安いです。直接処遇職員だけならばもっと安くなります。
これ以上人件費を安くすることは社会通念上問題がありますから、収入を増やすしかありません。支援費の収入を増やすためには、定員の増員しか手がありません。ただ、そうすれば個室ではなくなり、グループホームとはいえない、いまや解体を余儀なくされているただの入所施設になります。
協力金の使い道は赤字の解消と将来に備えた積立です。現在、文字通り利用者のご家族のご協力によって運営がなりたっているわけです。いただいた12,254千円のうち、9,665千円が赤字を埋めるために使用され、残り2,589千円が将来の修繕のため、施設に積み立てられています。
これまでの文章と数字を見て、懸命な方はお気づきだと思いますが、もしレジデンス日進がそのままグループホームであれば利用者は協力金ではなく「家賃」を払うことになります。そうなると協力金というようなあいまいな収入ではなく、契約に基づく家賃収入として計上されますから、なんら赤字ではなくなります。実際のところ、レジデンス日進はグループホームと変わりません。むしろ通常のグループホームよりも高機能な設備を持っている未来のグループホームです。また協力金を払わなければ、名東福祉会の他のグループホームとの格差も生じてしまいます。協力金には積極的に協力する姿勢が家族としては絶対に必要であると思います。(これは理事長としてではなく両者家族の立場からの発言ですが)
将来、レジデンス日進はグループホームに転換する予定です。その際は「協力金」の名称はなくなり普通の「家賃」になるはずです。それよりも、国は今すぐこのようにがんばっている「施設」に対して支援費単価を上げる事が必要だと思います。地域福祉の促進のためのインセンティブになると思うのですがいかがでしょうか。