古代ギリシャ時代にエピクロスという哲人がいました。あたりまえの幸せを求めることが人生の目的であると教えた人です。
健康第一。贅沢ではないいい食事を食べて、友がいて、食べていくために必要な仕事があり、簡素な衣服があって住まいがあれば良いと。平静な心が大事とも。権力闘争とは無縁の世界。まるで「なんでもないような事が幸せだったと思う」という歌のような教えです。日本のような穏やかな自然の国にはぴったりの生き方だと思います。
エピクロスは「庭園」と呼ばれる「楽園」で弟子の人たちと<自給自足生活>をしたそうです。エピクロスの事を調べていて、私は思わず現代の施設の生活を思い浮かべました。福祉施設が提供すべき生活も、古代ギリシャ時代にエピクロスが求めたものと本質的に同じかもしれません。
名東福祉会では創設以来「楽しい事」を大切にしています。今日のプログラムは楽しかったのか、健康的であったのか、職員も利用者も楽しく作業に取り組めたのか、友と楽しい時間を過ごせたか、外部内部の人を問わずいい笑顔とどれだけ出会ったのかなどなど。反対に、苦痛や恐怖はなかったか、ねたみはなかったか、喧嘩はなかったかなど。そんな事を反省材料として会議を行います。エピクロスについてはあまり知りませんでしたが、元来、福祉が求めるべきものはそうしたものかもしれません。
エピクロスの「庭園」はずいぶん楽しそうであったけれども、あまり外部の人との交流がなかったらしく「閉鎖的」とか「快楽主義者」と批判もされたそうです。それは誤解だと思いますが。今でもエピキュリアン(快楽主義者!)という悪口言葉が残っているくらいこの人は理解されていません。
私たちも、あたりまえの幸せを求める事が大切であることをいつも確認、地域の人に説明を怠らないようにしたいものです。奈々枝会長の命日の今日、そんな考えが想い浮かびました。