奈々枝会長の思い出話のひとつに、終戦直後の大阪における武田薬品工業での研究助手生活があります。研究助手と言っても、看護師として、ただ言われるままに薬品の合成や実験のお手伝いをする存在だったようです。
そんな見習い生活ではあっても、若い時の体験は恐ろしいもので、その後、終生会長の生き方に影響を与えたのではないかと思います。苦しい局面にでくわすと、
「成せばなる、なさねばならぬ何事も・・・」
と言ったり、また何事かを人様に教えなければならないときは
「してみせて言って聞かせてさせてみる」
と実践してみたり。
これは明らかに武田信玄の言葉。武田家の当主を戴く当時の武田薬品の中枢部の仕事場では、社員が互いを励まし、後進に技術を伝える度に普通に話されていた言葉だったと思います。武田信玄の言葉は上杉鷹山に引用され、新渡戸稲造の「武士道」によって米国大統領のルーズベルトの行動にも影響を与えたとか。
武田の強みは絆。わが郷土の英傑信長に敗れはしましたが、武田武士の絆の強さや自助や互助の精神は日本の武士道の原型ともいえます。
今、私たち日本人は大震災、津波、原発の3つの危機に見舞われました。それでも被災された人々や救助に向かう人々は、雄々しく自助、互助の精神、地域の絆の強さを発揮して再び立ち上がろうとしています。それが世界から称賛を得ています。
名東福祉会も、自助、互助の精神を発揮し、地域との<絆>を深め、会長の遺訓に応える時だと思います。