社会福祉、とりわけ障害者福祉にとって最も重要な資源は、人、モノ、カネのうちどれでしょう。みなさんはこのうちどれを選べと言われても、どれもしっくりしないのではないでしょうか。
私は、実践経験=ノウハウだと思います。もっといえば、ひとりひとりの生活状況において、人と場に即した適切な支援プログラムを選択し提供するノウハウ(暗黙知と形式知)こそが社会福祉の組織にとって最も重要な経営資源だと思います。
障害がある人には、それぞれ障害を克服してきた歴史があります。また支援者の側にもそれまでに支援が実った歴史、失敗した歴史、いいかえれば学習経験があります。ノウハウは障害がある人と、支援を提供する組織や地域の学習経験の集積とも言い換える事ができます。従って、生活相談にしても、現場経験のない理論だけの相談支援では喜んでもらえる事は難しいかもしれません。
ただ、ノウハウはそれまでに経験した時間や人間の数ではないと思います。歴史の長い法人や規模の大きな法人が有利とは限りません。問題はその質です。たったひとりの支援経験や、短い支援経験でも、それが地域の住民の課題に対する姿勢や社会福祉制度を変えるだけのパワーを持つ事もあり得ます。
名東福祉会の実践においては、これまでに私たちが問題を克服してきた経験を振り返って尊重し、ノウハウを共有化し、持っているものはそれを伝達し、若い人はそこに新たなアイディアを加えてノウハウを常に改良していく事が肝要と思います。