障害者自立心法は、小泉構造改革の影響で、福祉予算の削減のための法律に変質してしまいました。しかし、その原理は、もともとヨーロッパ発の雇用政策の潮流に乗っかろうとした法律です。イギリスの「支援付き雇用ワークブック」(2002)という本に「就労支援の原理」がありますのでそれを紹介してみましょう。
支援付き雇用(Supported Employment)の原理は
1)自己決定
2)相談者中心 提供できるサービスから見た計画ではなく、相談者の目標や希望や技能を中心に計画しよう
3)一般的社会での普通の経験、家族、友達、知人、仕事、経験をめざそう
4)自立をめざす
5)仕事をしたいと願っている人はみんな能力に応じて働く事ができる
6)失敗することや友達づくりや技能の向上は働く場でしか学べない
とあります。悪名高き「障害者自立支援法」ですが、その原理はこうした考え方を踏襲していると思います。この「就労支援の原理」はもちろん施設の活動にも適応されます。
WehmanとKregelは「働く事(work)は個人のQOLを定義するとき、中心的な役割を果たし、人生経験そのものである」(1998)と述べました。ここで彼らは就労(employment)という言葉を使っていません。より広い意味のworkという言葉を使っています。働くという字も人のために動くという意味です。施設であろうと企業であろうと、「人に喜んでもらう事は人生をゆたかにする」という原理で人は動いています。尊厳や自己決定は、働く事を中心とした人生において実現するのだと思います。働く事がQOLを決定するという考え方はユニバーサルです。
収益を上げなければ働く事にならないというわけではありません。お金儲けは難しく、お金を儲けようとすればするほどかえって人に喜ばれるということができず、案外儲からないという結果になったりします。逆に、お金儲けを目指すのではなく、人に喜ばれることを目指していたら儲かってしまったと、多くの事業家はいいますよね。
ものが売れない時代に人に喜んでいただくためには・・・難しいですが、やっぱり食べ物に携わっていく事はまず重要ですよね。食べる事以外にも「人に喜んでいただくこと」はたくさんあるはずです。そうした原理に基づいた実践の成功例をみんなで共有することが、より人に喜ばれる支援システムをつくります。
今回も小島さんのブログを受けて、障害者自立支援法における就労支援の原理について触れさせていただきました。