半径500mの街づくりというコンセプトがある。高齢者になると行動範囲が狭くなり、移動できる距離に制限をうける。そこで、半径500m以内にスーパー、コンビニ、金融機関、学校、病院、介護サービスなど、生活に必要なものがすべて揃う街づくりを行おうという構想が生まれた。この構想は高齢者だけではなく、子どもや障害者も含め、多くの自治体の街づくり政策で取り上げられる。
名東区の人口は平成21年12月現在、160430人。人口密度は8252人。半径500mの円に直すとだいたい25ブロックほどに分けた街づくりをすると歩いて支援拠点に通える街のイメージに近づく。
名東区に障害がある人はどのくらいいるだろうか?
やや調査が古くなったが、平成17年度の障害者白書によれば人口1000人に対して
身体障害者は28人
知的障害者は4人
精神障害者は21人
という数字がある。白書では国民の5%はなんらかの障害を有しているとされている。
これを機械的に名東区に当てはめると、8000人となる。その上、高齢化が進んでいることと、法制度の改定等で障害者支援の対象の拡大もあり、支援の対象となる障害がある人は増え続けている。
先に述べたように、名東区内を25ブロックに分けて考えると1ブロックに320人の障害がある人を支援することが可能な拠点を設置する必要があるということになる。拠点は学校、幼稚園、保育園、病院、老人ホーム、障害者施設など公共施設はもちろん、障害がある人が働く場所やNPOや自治会組織のような非公式の組織でもいい。また建築会社や生活用品店、食料品店に至るまで「支える人の輪」ができるのが望ましい。
問題は、そうした事業所が出会い協力し合うことが難しいということだ。教育と福祉、医療と福祉、企業と福祉と聞いただけでいろいろ話がややこしそうだ。しかしながら
これらの支援組織が連携しあってこそ、障害がある人の生活は向上する。
25のブロックのひとつひとつの中に人のつながりがほしい。320人を協働で支えるようになって人の顔が見える支援ができる。現在、わずか3名のスタッフで、名東区8000人の相談支援にあたることになっている。もともと公的なしくみだけで街づくりを行うことは不可能なのだ。むしろこうした行政や法制度に頼るような話は、大きな話になればなるほど嘘話になりやすい。
考えてみれば、街づくりは公共サービスや制度を整備すれば済む話ではない。人と人が支えあうことが必然であるという街をつくるには、その街に済む人が共同意識を持つことからやり直さなければならない。それまでは
「いつも御世話になります」
「こちらこそ」
「先日はどうも」
「例のような話でまた御世話になりたいんですが」
「それはこちらとしてもありがたい事ですからご遠慮なく」
という人間の数を増やしていくしかない。道は遥か遠い。