新体系への移行がなかなか進んでいない。
ここにきて障害者自立支援法のゆくへに対する関心が障害者関係施設にも政治の世界にもともに薄れてしまっていることがある。
見直しの時期も迫っているため、いまいちど問題点を整理して前に進むべきだ。
新体系へ移行していかない理由として、問題点が大きく分けて3つある。
第一に人材の確保の問題だ。報酬単価が低く、経営に汲々としている状況で人材が集まらないのは当然だ。報酬を改善しなければならない。
第二に新体系へのインセンティブ不足が揚げられる。旧体系の方が経営が安定しているのでは誰も急いで移行しようとはしない。
第三に「地域生活相談事業」の遅れがある。
そもそも新体系は地域生活を基盤とする障害福祉のグランドデザインをもとに設計された制度だ。
これを実現するためには最適な地域生活をコーディネートするための相談支援のしくみが不可欠だ。
人材確保についてはまず障害関係の職員の平均給与を上げなければ難しいだろう。
厚生労働省が平成20年度全国の5000箇所の障害関係の事業所の給与を調査した。その結果、職員の平均給与は3385000円だった。
これを全職種の平均に近づけていくことが必要だ。
同時に、正職員と非正規職員そのもの壁をなくすこと、
職員の能力評価に基づいた給与体系の開発すること
職員のキャリアパスを形成するための研修制度や技術開発
など経営者の努力も必要だ。
もちろんそうした努力に正しい評価やインセンティブを地方自治体が行うことも必要となる。
新体系へのインセンティブを強化しなければならない。なかでも報酬単価設定の低さは決定的だ。とはいえ、すべての報酬をスライド式に上げるのではなく、地域移行に向けてメリハリのある報酬アップが望まれる。なかでも
1 重度障害のケアに対する報酬
2 療育型児童デイサービスに対する報酬
3 ホームヘルプやケアホームなどの生活支援に対する報酬
の改善は必須だ。
日割り報酬に対する批判がわれわれ施設経営者からも強いが、これはかえって堅持すべきではないか。新体系への移行を進めるためには障害者自身が自由に必要なサービスを選択する概念が必須であり、それはとりもなおさず日割り報酬に結びつく。
合わせてケアホームなどのハードとしての住まいの確保について抜本的な対策が望まれる。
就労支援の促進のためには未曾有の不景気の対策も合わせて福祉施設の農業連携を進める政策も必要だ。
鹿児島県の白鳩会では農業法人を設立して地域ぐるみの雇用と障害者就労支援の両立を実現している。この活動にヒントがある。
愛知県でも安城の施設「ハルナ」がハウスにおける農業作業の請負を行うそうだ。今後の展開に注目したい。
相談事業の遅れは致命的だ。
地域における拠点を整備し、自立支援協議会を育てる政策が必要だ。そのためには自治体直営の協議会ではなく、中立的な民間活力を育てることが大切だ。相談支援の充実のために、自治体の役割は正しい実践に対して正しい監査と評価を行うことだ。
これまで多くの犠牲を払って進めてきた障害者自立支援。ここで後退してこれまでの努力が水泡に帰してしまう愚は避けなければならない。