障害者自立支援法はその理念において誤っているわけではない。問題は自立支援に必要な予算を十分につけられていないことにある。
支援法ができて名東福祉会では
1 支援センターでニーズアセスメントを地域で行うことができるようになった
2 地域の社会資源間の連携が進んだ
3 児童デイサービス制度を利用して「たけのこの家」で行動療育を行うことができるようになった
4 緊急時になんとか対応できる道が開かれた
5 現在利用している施設を継続利用しながら別に生活の場所を利用することができるようになった
6 補助金の規格に適合した施設を作るために、現場のニーズに合わない設備にお金を使わなくとも良くなった
などができるようになった。これだけの効果はやはり支援法がなければ達成できなかった。
障害者自立支援法の問題はこれまで
1 障害者本人負担の問題
2 障害程度区分判定の問題
3 激変緩和の問題
などの問題に焦点があてられてきた。安部内閣に続き福田内閣の支持率の低下に歯止めをかけるという政治的意図も手伝って、障害者自立支援法による激変を緩和する交渉が「成果」をあげてきたが、そのたびに支援法らしさが薄まり、結果的として自立支援法の本来の精神から離れ、措置の時代に回帰して行ったことは否めない。
この問題は関係者がもう少しシンプルに障害者福祉予算の問題として協議できることが必要だと思われる。
予算の協議がみのりあるものとなるためには、肝心の自立支援の効果をどうやって測定するのかという根本的な議論を避けるわけにはいかない。
従来の評価は従来型の施設サービスからより地域福祉とみなされるサービスに移行することに絶対的な価値を置くため、移行しないことが不当に評価が低くなる。
たとえそれが本人のQOLの向上にとって必要欠くべからざるものであっても入所施設利用を継続することは「悪」となる。
これは自立支援法を設計した段階で意図的に仕組まれている。一部の学者や施設経営者が施設解体をレポートし、入所施設を絶対悪のように述べることがそうしたからくりを正しいもののように錯覚させてしまう。
支援法ができてからの名東福祉会における6つの効果を述べたが、これらは施設の「移行」とは無縁だ。
本来、本人のQOLの向上は施設や働く場を「移行すること」とは無関係だ。QOLの向上は本来、本人のニーズをどれだけ実現できたかで問われなければならない。その意味では障害者本人もサービス提供者も地域社会も行政もともに本人のQOLの向上を認め合うことができる共通の「指標」を開発することが急がれるのだと考える。予算はそうした指標のもとに編成されるべきだ。
障害者自立支援法の見直し時期まで残された時間は後わずかしかない。