今後、有料老人ホームは多様化に向かいます。シニアリビング・マーケットは各方面から熱い視線を浴びている将来有望なビジネスです。今の高齢者福祉ビジネスはまさに不動産業の様相を呈しています。
スウェーデンの身体障害者施設に見学に行ったとき、ほとんどの人が高齢者で拍子抜けした覚えがあります。身体的なハンディは高齢になればほとんどの人が負います。だから身体障害者施設なのです。
プールあり、リラクゼーションルームあり、食堂あり。日本のスパのようなものです。日本の多くのシニアリビングマーケットも快適な個室とリハビリ施設を併設するような方向に進んでいくでしょう。
一方、社会福祉法人立の老人ホームは重度の認知症や介護度が高い人たちを受け入れることにならざるを得ないでしょう。そういう方向に介護報酬体系も設計されることと思います。
社会福祉法人の存続意義も問い直され、介護度の高い利用者の受入が進んでいくということです。
知的障害がある人のアシステッド・リビング(介護付き生活)はまったく取り残されたままです。
ただ、その気があれば高齢者施設を利用できるようになるし、高齢者施設側からしてもよいお客様になる可能性があります。利用者によっては高齢者施設の方があっている人もでてくるかもしれません。
夜間は高齢者施設を利用し、日中は障害者施設を利用するなどのパターンもあり得ます。ですが、複数の法人間を行き来する利用方法はコストがかかり、自己負担も増えるため、夜間ケアを利用する法人に
すべてをゆだねることになると思われます。
しかし、他害や自傷行動がある知的障害者を受け入れ、そうした行動が出ないような質の高いケアが行える高齢者施設がここ10年の間に多数育つことは難しいでしょう。
逆に言えば、現在の知的障害者施設は重篤な問題行動に取り組むことができる技術と、低ランニングコストで質の高いケア環境を整備することが生き残りのカギとなります。
緩和措置と混迷した政治状況に安心している施設は、早晩、倒産の危機と隣り合わせになると思います。