社会福祉法人の改革はこれからも進むでしょう。主に財政的な問題です。もう忘れかけてしまいましたが、三位一体の改革、補助金の改革、政策金融の見直しなどがあり、医療改革、社会福祉法人改革がはじまり今に至ったのです。

それ以前は社会福祉法人はつぶしてはいけないという意識が行政にありました。今も基本的にはそういう立場です。でも、100の法人がすべて潰れずに生き残る政策は、この時代、護送船団方式といわれこれ以上続けることは困難だと思われます。
今、市民のみなさんやマスコミからも社会福祉法人や介護サービスには非常に厳しい視線が注がれています。私たちはこの厳しい時代に、決して後ろ向きになることなく、少しでも利用者の満足に資するような効率化に努めていく必要があります。

一般の企業であれば生き残りのポイントはお客様の満足です。社会福祉法人がお客様である利用者の満足を得るために努力を重ね質の高い福祉サービスを提供しても行政にはなかなか評価していただけない構造になっていることが問題です。もちろん利用者には評価していただけますが。

質の評価の問題は行政の監査のあり方に関係があります。もちろん法令に従わうことは大切です。ただ、法令に従うことと、サービスの質を高めていくことは違います。監査は決められた内容をクリアしているかどうかに重点が置かれ、質の評価はほとんど関心事ではないことが問題でしょう。

名東福祉会で新しく始めた児童行動療育センターでは母子面談からビデオ記録の分析などを通し、きめ細かいアセスメント作業を行っています。ところがそうした療育を実施していてもいわゆる「預かり集団療育」と単価が変わらないという問題があります。レジデンス日進ではユニットケア、全室個室でナイトケアを行っています。利用者にはたいへん喜ばれていますが職員の配置数は増え、職員の介護の動線は相対的に長くなり、介護コストや労働の負荷が上昇します。
名東福祉会ではナイトケアの場と日中介護の場は分離しています。都市の近郊の閑静な住宅街にあるしゃれたレジデンスから都市の中にある日中介護の場や就労支援の場に移動することはいかにも普通の暮らしに近いものですが、入所更生施設のとなりに建てた建物に移動する生活となんら評価がかわりません。

お金だけで考えれば、児童療育センターを行うのではなく、保育所を経営してそこに障害児を受け入れた方が利益率は高いでしょう。
見るからにひとつの入所施設ですが、廊下がつながったとなりの「就労支援センター」に移動する方が建設費も移動の介護コストもかかりません。
地域生活支援センターの活動もやらない方が「効率的」経営が可能です。

私たち名東福祉会はいかにも不器用ですが、利用者の満足を追求してサービスの質を高める努力をしている法人の方が長い目で見れば生き残るのだと思います。でも現在は地域福祉にまじめに取り組めば取り組むほど法人の体力が衰えるという構造になっていて不公平感があります。

これから社会福祉法人に必要なのはむしろ「公共性」であると思います。法令遵守はもちろんのこと、皆さんに愛され必要とされる事業にいかに取り組みのかが問われているのだと思います。
せっかく利用者に満足していただき、仕事の質に誇りをもっている職員集団を抱えているのに、経営効率が悪いために退場を余儀なくされることはあってはなりません。正直者がバカをみない福祉のために、福祉サービスの質の評価は極めて大切だと思います。

ところで、これを書いているさなかにボランティアで上ノ山農園で作物を作ってくださっている方々から28,000円のご寄付をいただいたとの連絡が入りました。地域の人たちに信頼されていることを実感し、これでいいのかもしれないとも思いました。

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