神戸市の東労働基準監督署が最低賃金法に違反しているなどとして、神戸市内の知的障害者作業所を改善指導すると読売新聞より報道された。
福祉作業所はこれまで労働関係法規の適用を除外されてきた。
仮にこうした作業所が時給100円であるがゆえに「違法」となってしまえば、全国に2300箇所以上ある福祉作業所のほとんどが存在し得ない。
読売新聞の記事によれば労働基準法の適用を除外される条件として
(1〉作業収入は必要経費を除き、障害者に全額工賃として支払う
〈2〉能力により工賃に差を設けない
〈3〉出欠や作業時間、作業量などは自由で、指導監督をしない――などを条件に、労働基準法の適用を除外される。
とある。
今回の指導が作業収入を工賃が適切に支払われていないことが主な事由であるならば指導があってしかるべきである。もともと福祉作業所の指導員については支援費によって支払われているため、作業によって得られた収益は正しく工賃として還元されなければならない。
しかし、能力により工賃に差を設けないことや、利用者に対して「指導監督」をすることによって最低賃金を適用されるならば、果たして福祉作業所で自立のための訓練はできるか疑問である。
作業所において生活全般に対する支援が行われていることや個々の利用者が作業所を利用しているメリットを度外視して、単に工賃だけで作業所の存在意義を論じてしまうと、結局、障害者が地域で生活する場がなくなってしまう危険性もある。
障害者自立支援法によって就労継続支援事業となったとしても、状況は変わらない。労働行政には障害者福祉施設における訓練や自立への意欲がそがれることがないよう労働行政と福祉行政の綿密な連携を望みたい。