医療と福祉の連携

癌の代替治療について、いろいろ知る機会を得ることになった。日本でもアメリカ式の告知で「あなたは余命後何ヶ月です」と告げる医師が増えた。ところが、日本の場合、アメリカのように患者を支える仕組みがないため、非常に強い不安を抱いたまま患者は医療から放り出されることが多い。

日本の医療費のうち、癌の治療にいったいいくら支払われているのか。特に抗がん剤の費用は高く、全体で5兆円から10兆円以上の金額になる。もちろん、有効であれば文句はいわない。ところが、日本で普通に行われている癌の標準治療である「切除・抗がん剤・放射線治療」の有効性については成績が悪く、様々な議論がある。最近では切除についてはできるだけ患者負担を減らすように技術が進歩してきたものの、抗がん剤の利用方法については問題が多いといわれている。放射線治療にしても最新鋭の機械は保険は適応されない。

医療機関で普通に行われいる「標準治療」は対症療法でしかない。癌を根本から治癒するようなアプローチは医療機関ではほとんど行われていないといってよい。
とはいえ体の中に常に発生してくる癌細胞を異物として排除する免疫機能の不全が原因であることは明らかだ。免疫機構が不全になる原因はストレスが多い生活やバランスを欠いた食生活など、問題がある生活習慣と密接に関係していることもわかっている。
わかっているのに医療でそこにアプローチしないのは、やりたくともそれができない医療制度となっているからに他ならない。

医療、福祉、教育は一体的に連携して個々の患者や障害者、高齢者や幼児など、支えられるべき人を支える仕組みが必要だ。
日本の医療や福祉はヨーロッパのものと比べても、技術的にも熱意も比べ物にならないくらい優れている。にもかかわらず、患者や障害者の安息が得られないのは、個々の機関がバラバラに動いていてそれぞれが機能不全に陥っているからではないか。

成果を出せない日本の癌の医療費はあまりにも使い方が偏りすぎてはいないか。もっと代替医療や患者ケアや福祉的アプローチに大切な医療費を使うべきではないのか。その一方で献身的に福祉に力を注いでくださる医師の人たちがいる。医療費の仕組みを見直し、地域医療の制度を変え、地域医療を支えてくれる医師たちが福祉事業の中でもっと動きやすいような仕組みができるのではないのか。

となりのブログで、自立支援協議会が名古屋市の施策につながらない点について問題提起されていたが、医療と福祉が手をつないで事業ができる仕組みについてもっと議論ができないかと思う。

和の幸う地域

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わたしたちは「和の幸う国」をめざす。
日本書紀が今に伝える「憲法十七条」が「和を以って貴しとなす」の一文から始まるように、いにしえより、私たちは「和」の精神を重んじてきた。わたしたちは、これからも和を貴ぶ国であることを誓い、また、この精神のもと、和の先導者として国際平和の実現に力を尽くすことを誓う。
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上記の文言はこの7月17日、日比谷公会堂で開かれた「日本よい国構想」のサマーフォーラムで読み上げられた理念だ。このフォーラムは先ごろ突然辞任表明した中田宏横浜市長、山田宏東京都杉並区長、中村松山市長が中心になって開催されたものだ。もちろん橋本大阪府知事とも連動している。この宣言から、中田横浜市長らが、聖徳太子の十七条憲法の精神を国家経営の理念として掲げていることは明白だ。

私たちの国が最も大切にしてきたものは「和」である。このことに異論を挟むものはいないだろう。地方自治や道州制の動き、あるいは政党の選択はさておき、私が極めて重要と思えるのはこうした「地方自治派」の首長が一応に「和」を貴び、「温故知新」や「日本の伝統」を前面に掲げていることである。これから日本の政治はどちらにせよ、変わっていかざるを得ない。しかし、どう変わろうとも、「和」を貴ぶ精神が廃れてしまうことだけは徹底的に防がなければならない。

もちろんフォーラムでは紹介されなかったが、十七条憲法の第六条では、
「六に曰く、悪を懲(こ)らし善を勧むる者は、古(いにしえ)の良き典なり。ここをもって、人の善を匿(かく)すことなく、悪を見てはかならず�(ただ)せ。それ諂(へつら)い許(あざむく)者は、国家を覆(くつがえ)す利器なり。人民を絶つ鋒剣(ほうけん)なり。また佞(かだ)み媚(こ)ぶるものは、上に対しては好みて下の過(あやまち)と説き、下に逢いては上の失(あやまち)を誹謗(そし)る。それ、これらの人は、みな君に忠なく、民に仁なし。これ大乱の本なり。」
とある。

和を貴ぶためには、積極的に和を乱すものと対峙し、これを懲らしめる事とある。面白い(?)のは、上のものに対しては部下のあやまちを説き、部下と会っているときには上のものの悪口をいうようなことは大乱の本であると説かれていることだ。残念ながら、こうした行動は、現在の日本の政治、学校、会社、福祉施設のいたるところで見られる行動だ。よい組織、よい地域をつくるためには、人の善を積極的に知らしめていくことが必要であると同時に、組織の中の小さな悪も見逃してはいけない。なかなか難しいことではあるが、「和」を成すために必要であることは論を待たない。

名東福祉会の利用者は、障害がありながら、賢明にその日を生き、地域の人々に少しでも喜んでいただけるよう、その人の能力に応じた仕事をしている。
パンを作っている天白ワークス、大人気の布製のひよこや陶器をつくっているメイトウ・ワークス、焼き菓子を作っているロト、そして先ごろオープンした障害者スポーツセンタ-内のカフェ・メイトなど、名東福祉会の
30年に及ぶ地域福祉の歴史の中で、徐々に地域の人たちの協力を得ながら、こうした事業が成り立ってきた。これは地域の方々の「和」の精神なくしてはなし得なかったことだと思う。

この小さな「善」を実践し、ひとりでも多くの地域の人たちに知らしめ続けることが、私たち支援者の使命であり、和のさきはふ地域づくりの第一歩である。