選択肢の多さと消費者の満足

普通は選択肢が多いと満足すると考える。実際にはそうはならない。
実際には選択肢が増えれば増えるほど、消費者の満足度は減って行く傾向がある。

行動経済学という分野の学問がある。
経済を動かしているのは理論的に欠陥がない人間ではなく、感情をもった不合理な判断をする人間だという前提のもとに
これまでの経済学を行動に視点をあてて組みなおした経済学だ。

選択肢が多いほうを選ぶのが合理的な判断だが、人は選択肢が少ないほうを選んでしまう。そのような「選択のパラドックス」が存在することを行動経済学は教えている。

知的障害者の地域福祉においても同じようなことがいえるのではないか。食事の選択メニューにはじまり、作業の選択、余暇の洗濯、住む場所の選択・・・といろいろと選択肢が拡大していく。

選択肢がないことは大いに問題であり、「措置」はまったく自由が阻害されているため問題があった。
だが私たちが常識としている施設生活の選択性に価値があるという考え方にも問題はないか。

両親とともに家庭で生活する、グループホームで生活する、新しくできるケアホームで生活する、レジデンス日進で生活するという4つの選択肢でも精一杯だ。それ以上の選択ができる状況になると、ひとつひとつの場所の満足度が逆に低下しそうな気もする。

「毎日働く場所を変更することができます。」
消費者としての権利が護られているかに見える支援費の日払い制度。実際には日替わりで利用する施設を変更できることを喜ぶ知的障害者は少数派だろう。
ひとつの施設を選択できる日数は1ヶ月で23日を限度とすることも理解できない。(というか予算の都合以外のなにものでもないが)
選択という美名のもとに実際の利用者満足が阻害されていくとしたら、私たちは大いに反省しなければならない。