生産消費者

未来学者のアルビン・トフラーは生産消費者という概念を提示しました。生産消費者とは「自ら生産し、自ら消費する消費者」のことです。
・自分で家を直したり造ったりする日曜大工
・自分で支払うセルフレジ
・デジカメ
・自宅でできる健康検査器具
・利用者が自ら編集し加筆するインターネットのWikipedia
・読者が書き込みができるブログ
などなど。いたるところで、「生産消費者」は増え、自ら富を形成しているとトフラーは説きます。

障害者施設の利用者やその家族、職員は以前から「生産消費者」であったという面があります。施設では「自分たちの生活の質を上げるために自分たちが手づくりで生活を作り上げる」という側面があります。貧乏だからそうせざるを得なかったという側面もありますが。
障害者施設の場合、生産消費活動の多くの部分を職員や家族会やボランティアが行うことになりますが、利用者自身もそうした活動に参加することができます。

例えば、施設のバザーにおいてはバザーで販売する用品をつくる人も、それを購入して消費する人も施設関係者であったりします。
バザーの目的としては施設運営費を獲得するためという大義名分はあるのですが、生産者と消費者が同じであり、金銭的な尺度から見ると目的とは裏腹に、たいへん小さい金額しか動きません。でも、バザーに生産性がないかというとそうではありません。むしろ、地域の人々や家族同士の絆を深め、施設の生活を豊かにするという付加価値があります。生産消費活動という側面からバザーを見れば、実際の金銭活動の数十倍の経済活動が行われているといえます。

トフラーは今後、世界の生産消費活動が拡大し、通常の貨幣経済を押し上げていくと見ています。障害者福祉に関する財源が厳しいといわれていますが、施設における生産消費活動は知的障害者福祉がおかれている状況の突破口になると思います。これまでに蓄積されたノウハウにより、授産施設や福祉施設には豊富に生産消費活動を行うツールが存在しているからです。陶芸、木工、農作業、園芸、日曜大工、製パン、製菓、縫製、給食作りI、T技術・・・
名東福祉会では今後、お米すら自分たちでこしひかりやはつしもなどのブランド米を農家から直接手に入れ、精米してつきたてを食べることができます。ありとあらゆる楽しい生産消費の機会が施設には存在しています。生産消費活動を続けた白鳩会では自前の農園から年間2億円を超える収益を上げていますが、実際にはそれを遙かに上回る生産消費活動を鹿児島全体で展開されています。

今後団塊の世代の労働力がボランティアとして大量に施設に流入し、いっしょに生産消費活動が展開されれば、施設利用者の生活は金銭によらなくても飛躍的に豊かになるはずです。施設が閉じた消費活動を行うだけでは、今の財源ではたいへん貧しい生活しか手に入れることができません。でも生産消費活動があれば別です。授産施設に対して貨幣経済的の側面からのみの評価で施設を断罪し、施設不要論を展開する知識人を私は信じません。

私たちは生産消費活動を展開できる就労支援活動や日常生活を求めていきたいと考えています。