知的障害者の居住系サービスが足りない

第1期の愛知県福祉計画が発表された。それにあわせ愛知県では障害者福祉に関して県民のパブリックコメントを求めている。
これからの障害福祉は地方自治体が主役。実際の障害者自立支援施策は愛知県が鍵を握るため、福祉計画をじっくりチェックすることが重要だ。

知的障害者のためのケアホーム・グループホーム設置計画を抜き出してみると次のようになる。

ケアホーム・グループホーム
手帳保持者  更生施設   平成18年  平成23年目標   増加
愛知県全体 36672人 2872人  1088人  2771人   1683人
名古屋市  11030人  478人   500人  1190人    712人
尾張東部   1777人   90人    52人   100人     48人

このように県レベルで数値目標が設定されたことは歓迎すべきことだ。ただ、障害者自立支援法における居住サービスは運営が苦しく、実際に目標を達成するには追加的な支援策も必要となる。愛知県の福祉計画では
1 改修費・初度備品費
2 敷金・礼金
3 費用の支援を検討する
を考えているようだがこれだけでは十分とはいえない。特にケアホーム運営費の支援や家賃補助についてはまだ具体的な対策は一切公表されていない。今後どういう政策が打たれていくのかに注目したい。

グループホームやケアホームの入居者にとって家賃負担は大きい。一方、入所施設を利用する場合には<家賃負担>という概念はない。この点で入所施設とケアホームは大きな利用格差となっており、障害者の地域生活移行を阻害する要因になっている。

入所施設とケアホームの家賃の不公平を解消するために、入所施設の自己負担を上げるというのは愚かしいことだ。入所施設は地域福祉全体をバックアップしている。入所施設を破壊することはひいては地域福祉システム全体を破壊することになりかねない。

3万6000人の知的障害者のうち、なんらかの居住サービスを利用している人は県全体で10%、名古屋は9%、尾張東部は8%となっている。実際には家族が知的障害者を支えていることになり、親なき後の不安は極めて大きいことが浮き彫りにされている。カナダのバンクーバーに訪問したとき、18歳を超えればほとんどの人が家族から離れて生活していると聞きいた。スウェーデンやデンマークはもちろんのこと、ドイツやUSAでもイギリスでも家族介護が90%という国はない。障害者自立支援法は自由な生活を謳歌できることを保障する法律であるべきだが、数値目標が達成されても諸外国との隔たりは依然として大きい。地域生活自立支援法は本来、家族介護支援法ではない。家族介護を前提とするのではなく福祉サービスで障害者の自由な生活を謳歌できる社会を実現すべきだ。

解決方法としてはケアホーム経営を魅力的にするしかない。例えば
1 地方自治体がケアホームの利用者に対し、家賃の支払いを助成する。
2 ケアホーム用アパートの設置者に対しては固定資産税を低く抑えたり、建築費の融資の返済に補助を行うなど家賃が低いレベルでもアパート経営が成立つような政策を打つ
3 公営住宅の利用を行い、低い家賃設定が可能な方法を導入する。
4 名古屋市の場合には知的障害者ケアホーム用アパートには容積率を緩和するなどの特例を設ける。

それぞれの自治体に合致した独自の支援策が求められている。名古屋市については公営住宅の活用を考えていると聞く。実際にどのような形でそれを行うのか期待したい。

障害がある人が多く集まる街は住みやすい街だ。これから高齢者も爆発的に増えていく。高齢者にも障害者にも魅力あるまちづくりに資するような障害者福祉政策が望まれる。