国が終末医療に支払っているお金は医療費全体の70%にものぼるという。平成16年度の医療保険医療費の合計は29兆6617億円。70%ならば20兆円もの金額が支払われていることになる。これから国はできるだけターミナルケアに要する高度医療費を下げる方向で検討が進んでいる。すなわち、人がこの世を去るときにはできるだけ家庭や福祉施設で看取が行えるような体制をつくることを意味する。

現在、国では療養型病床群を廃止し福祉施設でターミナルケアを行うように制度設計が行われている。確かに、死を尊厳をもって迎えることは重要で、医療現場で物理的に人を生かすだけが目的化してはならない。また、これだけの医療費を使うことも問題がある。これだけ国が破綻しそうになっているとき、そういう論理がでるのはもっともである。

ただ、ほんとうに質が高いターミナルケアを行おうとすると、やはり医療的ケアに関する知識や技術を福祉施設に導入することが必要である。現在、福祉施設では十分な看護体制がとられているとはいいがたい。

例えば、病院を経営を基盤としている医療法人が経営している高齢者施設と高齢者施設だけの施設と比較すると、死を看取るときの技術、あるいは重篤な事態につながらないようにする技術に差があるという。

病院では患者がいかに苦しまないようにするのかについて細心の注意を払う。例えば、食べ物を食べたときの胃からの逆流の問題を考えてみよう。高齢者の場合、福祉施設では一般的な車椅子に乗せて食事を食べていただくところが多い。そうした場合、食べたものが逆流して、吐血することが多くなる。場合によっては肺に入り込んで肺炎を起こす。病院ではこうした問題を防ぐために30度程度の傾斜角がついたベッドを用いる。車椅子でも足を伸ばして角度をつけて利用できる車椅子を用いる。そうすれば食べたものの逆流が起こりにくい。

病院では看護師が中心になってケアを行う。注射、投薬、タンの吸引、経官栄養など、現在福祉施設ではできないが病院ならできることが多い。一方、介護福祉士は医療行為と呼ばれるものはできない。看護師スタッフが少ない福祉施設では、訓練されたスタッフが不在であり、医療に関する知識は不足しがちだ。高齢者施設の利用者が危険な状態になると病院に緊急入院を行う。そのまま、病院で終末医療に移行する場合が多くなる。こうして死を施設の中で看取ることがないために、そうした技術が発展しなかったのは当然ともいえる。

福祉施設には看護技術が圧倒的に不足している。ただ単に医療現場から福祉施設に終末医療の現場を移し、医療費を削減するという発想はいただけない。人間に対する尊厳を保つことができる、より質の高い看護を「福祉施設で」実施することができるように看護師配置を強化するなどの福祉施設の医療技術の向上に資する政策が必要だ。

レジデンス日進では家族会が主になってクリスマス会が行われました。

歌は芳賀さん。ピアノは上西さん。今日はボランティアで来ていただきましたが、日進市の地元で教室を開いている先生方です。

美しい声で歌を歌ってくださると、利用者のみんなもうっとり。ピアノ演奏では先生の横にS君がちょこんと座っています。始めはニコニコとしていただけでしたが、しまいには少しずつ指がピアノの鍵盤の上を踊ります。案外「音楽」らし聞こえ、ちょっとしたお愛嬌なので、先生もなすがままにしておかれたそうです。

思えば以前から音の大嫌いな人でした。大きな音がすると飛びだしていってしまいます。この頃、そんなことがなくなったと思っていましたら、今日は外に飛び出すのではなく、一緒にピアノを弾いている感じ。しかもニコニコ笑って。いい感じです。

この後、ゲームや松健サンバをしてケーキを食べていろいろプレゼントをもらってその後、所長より工賃が渡されました。みんな、「オーッ!!」と声を上げて喜んでいました。

新しい年を迎えたら、働ける人はもっともっと働いて、工賃をもっと沢山もらって、楽しいこともいっぱいやろうね。今年はもうじき終わりますが、元気にそろって新しい年、よい年をお迎え下さい。ありがとうございました。

2006年12月23日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

天白ワークスに用事があって出かけました。

作業室に入ったとたん、ひとりの利用者が駆け寄ってきて、
「ちっとも来なかったねえ。なんで来てくれへんの?」
「うん、忙しかったもんでね。」と私。
「このごろ(レジデンス日進の)Sさんが来なくなったので、私ひとりでがんばっているんだよ」と新作のはしおきを見せてくれました。

そこへまたひとりが来て「ちっとも来んなあ。来なかんよ。(来ないといけないよ)」と背中をたたきました。こんな私でも喜んでくれるんだと思いました。

ちょうどその時、10人ばかりの地域のグループの方達が陶芸教室を終えて帰られるところ。この方たちは老若男女さまざまな人たちのグループで、天白ワークスの利用者の人たちの作業と平行して開催されている陶芸教室の参加者のみなさんです。私はごあいさつするとグループの長の人が「私たち、おじゃまして申し訳ありません。」とごあいさつ。みなさんいっせいにニコニコと口々にごあいさつ。「来月もまたおじゃまします。」と帰っていかれました。

仏教に、和顔施(わげんせ)ということばがあります。無財の七施のひとつで、自分の損得から離れて、人に対していつもにこやかに笑顔をもって応対すればいろいろ良い方向へ転じていくという教えです。

私はこうした教えがあることも知らなかったのですが、私は利用者さんたちの笑顔に支えられて生きています。利用者さんの笑顔はまわりの人々を幸せに向かって歩むよう後押ししてくれているようです。なにかと苦しいことが多い今日この頃ですが、私は毎日、利用者の人たちとも、地域の人々とも笑顔で接することができ本当に感謝です。

2006年12月21日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

12月17日(日)、今日はレジデンス日進の利用者さんたちをいつも診療してくださっている福島先生ひきいるドクターズバンドのクリスマスナンバー演奏の日です。バンドメンバー7人すべてがお医者さまです。

私は丁度お客様があって、用事を済ませた後、途中参加でしたが、デイケアセンターに入っていくと圧倒される程熱気むんむんでした。みんなそれぞれカスタネットやタンバリンを持って踊っていました。バンドの方々も汗をかいて顔が光って見える程熱演していました。お客様も参加され、「重度の方が多いと聞いていましたがどの人が重度の方なのかわかりませんね」とおっしゃいました。

大きな音がすると走り出してしまう人、興奮して大声を出す人、ボンボン飛び上がる人といろいろいたのですが、みんな楽しそうに踊ったり、楽器をたたいたりしていました。楽しさがわかってきたのだと、私はとても嬉しく思いました。

こうやってレジデンスの中で暮らしているみんなですが、施設の周りの人々がいろいろ外の空気を運んでくれます。音楽も仕事も楽しいこともすべてが中で暮らす人たちの心の糧となって何歳になってもみんな成長していくもとになるのだと思います。

2006年12月18日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

用事があってコロニーへ出かけました。用事が済んで私は長男と少し時間を頂いて、春日井市緑化センターへコーヒーを飲みに行くことにしました。

偶然にも、春日井市立養護学校高等部の生徒さんたちがハンドベルの演奏をするところでしたので、長男と二人ならんで会場に座りました。

そろいのハンドベル用の制服を着用し、白い手袋をして整然と並んだ様子はみんなとても凛々しく見えます。何人かの人がかわるがわる説明をします。題目の説明をする人、春日井市の福祉まつりで演奏したことを誇らしげに話す人、他の市町村から招かれて演奏を行ったことなど、みなさんとてもすばらしい挨拶で並みいる人たちは万雷の拍手でした。私はこの人たちなら全員就労することができると確信しました。障害の程度区分が高いとか低いとかいうこととは別に、どんな形でも良いから人に自分のことをしっかりと伝えることができることがとても大切なんだなあと思います。

演奏もすばらしく、「サンタがやってくる」「ジングルベル」「きよしこの夜」などクリスマスにちなんだ曲目を続けて演奏してくれ、長男もリズムに合わせて体をゆすっていました。「ハンドベル聞けてよかったね!」というと、嬉しそうにしていました。その後、子どもたちと養護学校生徒とがハンドベルを通してのふれあいタイムがあってみんな嬉々として交流していました。

時間が気になるのでそこまでにして、急いでコロニーに帰りました。棟に着くと、ノロウィルスによって下痢気味の利用者さんたちの世話で職員さんは大わらわ。ノロウィルスによる急性胃腸炎は2~3日ですぐに治りますが、感染する率も高く、熱も出るので大変です。おかげでもう下火になったそうですが、世話をしている職員さんたちに心から頭が下がりました。ありがとうございました。

※私たちもよく手を洗いましょう。
※今日も一日、とても良い日を過ごせたことを感謝します。

2006年12月17日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

久しぶりにクリスマスコンサートに行ってきました。始まるのが6時30分からです。この時間、いつも眠たくなる時間なので心配しましたが、なんのその、すっかりピアノ演奏に魅了されてしまいました。

曲目「オペラ座の怪人」や私の好きな「ラ・カンパネラ」が演奏され、バックの光るトナカイさんとあいまって、クリスマスコンサートはとても盛り上がりました。

そしてなんと演奏者からのプレゼントCDが私たちの同行者の18歳のお嬢さんに当たって、私まで大喜びをしました。

お店は旬の無農薬・有機野菜の家庭料理の店。オーナーご家族が最後に手作りクッキーの袋を配ってくださいました。きびきびしたお兄ちゃんから私は袋を頂きましたが、お母様に抱かれたダウンちゃんが私をじっと見ていました。私は「ありがと」とダウンちゃんに言いましたら、お兄ちゃんも嬉しそうでした。素敵なお食事と音楽で心を癒し、暖かな気持ちで帰路につきました。

このところ、施設運営に心を痛めていたのですが、ひとときとはいえ、心を癒されることは大切です。さあどうしたら次の計画を実行できるか、ふとんの中で考えているうち、いつの間にか眠りに入っていました。

2006年12月13日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

人と技術

社会福祉法人は後3年くらいの間に変化できなければ確実に滅びる。これからの3年間は人間力と技術力を高める3年間となる。

人間力とは利用者を大切にする力だ。現場でこの力をつけるためには、常に利用者の幸せを優先することだ。利用者は個人ごとに幸せが異なる。ひとりひとりに合わせて満足を積み重ねていく人間力が求められる。利用者を大切にする思想は組織の倫理性によって大きく左右される。社会福祉法人として生き残るためには法人に高い倫理性が求められる。

どんな分野のビジネスでも技術力が組織の力となる。福祉分野のサービスは人間によってもたらされる。技といってもいい。介護保険との統合という危機を前にして、これから生き残るためにはスタッフの教育・研修によって技術力を高めることが必要だ。

では知的障害福祉分野の技術はどういう形で高めていくことができるか。

技術は日ごろの実践の中で、努力の積み重ねによって成就される。現場に問題があれば改善し、少しでも安全性を高め、少しでも効率がよい方法を選ぶ。いい方法があれば貪欲に取り入れることが肝要である。問題があれば正直に公表し、それを直す。そのために職員が自ら現場を変える仕組みを導入していきたい。

知的障害者分野の介護は、他の福祉でみられる通常の介護に加え、就労支援がある。知的障害分野で身につけた技術はどの分野の介護にも応用が利く。反面、知的障害分野の介護はとてもひとりではできない。だから知的障害者ケアはチームでやる。

行政機関や医療機関、教育機関との連携も必要である。行政と連携を進めれば必ず一体感がでる。私たちは行政と馴れ合いになるわけではなく、また反目しあうこともない。時には激しい議論をすることもあるが、これからも行政との連携を最重点課題として地域の中で確固たる役割を果たして行きたい。

家族との話し合いも大切だ。だが、これはもっとも難しい。だから知的障害分野では特にコミュニケーション技術が大切だ。

自立支援はことばを変えれば問題解決支援である。問題の解決のためには本人の行動を変えることもさることながら、まわりの人の行動を変えることも大切だ。支援者自身が変わることができなければまわりの人を変えることは難しい。技術を高めるためには変化が重要だ。

名東福祉会は新しく、児童デイサービス事業を行う。もちろんニーズがあるから取り組んでいくわけだが、この分野で新しく迎える療育スタッフは名東福祉会の支援技術を大きく前進させてくれるだろう。職員教育・研修の中核的な機能として位置づけ、介護スタッフ全体の心理的、社会的な問題解決力を高めてまいりたい。

技術を磨いてもそれに見合う報酬がなければ人は長くこの世界にとどまらない。もちろんお金が報酬の全てではないものの、賃金は重要な要素ではある。ところが肝心の介護報酬単価がこれから高まることは予想しにくい。国や自治体に対して要望をあげていくことは当然としても、現実的な収入アップの道を考えねばならない。

それには、やはり、経営を効率化しながら利用者が求めるニーズに果敢に応えていくことだ。ケアホーム実現と就労継続支援・就労移行支援への取り組みがこの3年間の最大の課題となる。特に、就労継続支援は経理方式も変わり、利用者の収入アップだけではなく職員の収入アップや生活の質の向上にもつなげることもできる。大きな可能性をもっている道なのだ。名東福祉会はこの分野が特に弱い。これを変えていくことが生き残りの必須条件ともいえる。

最後に、さきごろ社会保障審議会で提言された、今後求められる「介護福祉士像」について紹介しておく。
今後、介護福祉士の国家資格要件はこの路線に従って改訂されていくことは間違いない。

 1 尊厳を支えるケアの実践
 2 現場で必要とされる実践的能力
 3 自立支援を重視し、これからの介護ニーズ・政策にも対応できる
 4 施設・地域(在宅)を通じた汎用性ある能力
 5 心理的・社会的支援の重視
 6 予防からリハビリテーション、看取りまで、利用者の状態の変化に対応できる
 7 他職種の協働によるチームケア
 8 一人でも基本的な対応ができる
 9 「個別ケア」の実践
10 利用者・家族、チームに対するコミュニケーション能力や的確な記録・記述力
11 関連領域の基本的な理解
12 高い倫理性の保持

12月4日(月)~5日(火)、ホテル日航豊橋を会場にして、愛知県知的障害者福祉協会が主催で職員研究大会が行われました。

「良質で安定したサービス提供を目指して 自立支援法でどう変えてゆくのか」がテーマです。今回は本人の参加と保護者の参加が思わぬほど沢山ありました。

基調講演は福岡寿氏(北信圏域障害者生活支援センター所長)。テーマは「自立支援法を受け、再び地域生活支援を考える」。地元西駒郷から地域へ移行し、その後、どう対応したかについての話です。それは「ケアマネジメントの仕組みづくり」がポイントで、その中心は実際にはケア調整会議であったといいます。地域の様々な分野のプロが集まり、障害者のニーズにどのように対応するのかについてのアイディアを出し合い、実行する会議です。これからは「どうやって福祉分野以外の人たちと連携するのか」がポイントであることを示唆されました。その話の速さはまるで機関銃のようで、私のように老齢の身には聴き取るのもやっとでした。

川口弘福祉協会前会長(ホタルの郷施設長)からも特別講演がありました。内容は施設は今存亡の時。厳しい状態だが、職員がきっちりやってゆかないと障害者が困る。
1 可も無く不可もない職員になってほしくない。
2 サークル活動、なれあい活動はだめ。
3 施設長は何もやらないはだめ。
4 若い職員からどんどんアイディアを。
5 違った分野から福祉を見てほしい。
6 目標管理が重要。指針を示す。
7 変化を恐れず、自ら変わる。
8 常識を打ち破る。
9 人間を好きになり、コツコツと進める。
これまで福祉分野ではあまり紹介されなかったP.ドラッカーの経営理論を引用され、福祉経営もいよいよ一般企業以上の経営センスや企業理念が求められていることを痛感しました。でもそこは川口先生。「論より愛、考えるより行動を」と福祉の実践家らしく話を結ばれました。

私は第6分科会の家族の会に入りました。会場は100人程入っていてたいへん驚きました。会長の南氏から「自立支援法は自殺支援法。今後、政治を動かす請願書を提出したいのでみんなに入会してもらいたい。家族も困っているが施設も困っている」とのあいさつがありました。こうした時代にはどうしても言葉が過激になりますが、政策が大きく変わるときには行政も施設も家族との十分な話し合いが必要であることを強く思いました。

利用者の兄弟といっても私と同年代の方もたくさんいらっしゃいます。愛知県の障害者福祉も50年以上の歴史を刻んでいますから、当時の利用者の親はもうとっくにいなくなり、兄弟の世代も高齢化が進んでいることがわかります。私たち名東福祉会も設立から30年近くになり、いよいよ家族会の世代交代についても考えていかねばならないと思いました。

2006年12月6日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

就労支援事業の活性を

2006年は障害者自立支援法によって障害者福祉が大きく揺れ動いた。

障害者自立支援法の光の部分は
(1)これまでバラバラだった知的障害者・身体障害者・精神障害者の福祉サービスが「一元化」されたこと。
(2)一般就労へ移行することを目的とした事業が創設されたこと。
(3)障害者が身近なところでサービスが利用できるよう、施設の基準や規制が緩和されたこと。
(4)支援費を国が義務的に負担する仕組みに改めたこと。 
その一方で影の部分は
(1)障害者が福祉サービス等を利用した場合に1割負担が必要になったこと。
(2)食費等の実費負担が必要になったこと。 
あまりにマイナス部分が大きかったために、自己負担部分について見直しも行われようとしている。

もちろん、今のままでは影の部分があまりにも大きい。これから十分な見直しを行い、障害者の生活の質が低下するような要因をできるだけ改善することが肝要である。ただ、私たち福祉サービスを提供する側の人間も、この法律が示すところである障害者の地域生活の充実のためによりいっそうの努力をする必要がある。

これからはこれまでのように国の予算に縛られて施設を建設する必要はない。自由な発想で仕事を開拓することができる。地域の中には通常の障害者が参加して市民の皆様のお役に立てる仕事がまだまだ存在している。これからは介護サービスの技術的な充実を計るとともに、就労支援を充実させることが必要だろう。

名東福祉会はこれまで、レジデンス日進の設置にエネルギーを費やし、障害者自立支援法の施行にともなう大幅な収入減を乗り越えるために翻弄されてきた。障害者自立支援法の導入に伴う混乱が激変緩和措置でひとまず落ち着きを見せた今、名東福祉会は地域の中で障害者と健常者が力を合わせて働くことに力を入れていかなければならない。激変緩和で与えられた時間はわずかである。

例えば資源の循環に貢献する仕事。現在、日進市では食用油の廃油を日進市運営の路線バス(くるりんバス)の燃料に再生する仕事を障害者施設に委託すること検討されているという。この仕事を私たちの法人の利用者の方々にも是非やらせていただきたい。

障害者の就労は一日にして成立しない。健常者と比べると作業内容の習得に時間がかかる。反面、一度習得した作業は確実にこなすことができる。リサイクル事業は継続性が高く、その点私たちの得意分野である。また、廃油を集め、それを自動車燃料に生まれ変わらせ、配達するシステムができれば、一般家庭からの廃油回収、一般車への配給へと拡大することができる。さらに、生ゴミの回収とゴミ袋や肥料やお米や野菜などとの交換など市民との触れ合いを深めるリサイクル事業にも発展させることが可能であり、大きく夢が広がる。

これからは観念的な地域福祉論はいらない。どうやって市民のお役に立てる仕事を獲得し、それを障害がある人の生活の糧にするかが肝心だ。ひとりひとりのお客様をどのように大切にするのかの積み重ねが地域に根付くことであり、その延長が就労継続支援事業であり、地域福祉である。

えがお歯科の橋本京一先生とお知り合いになり、この度、橋本先生から「若さと歯の関係について」お話をいただくことになりました。えがお歯科はレジデンス日進のすぐ近くにある歯科医院で、利用者さんたちが診療してもらっています。その医院の大先生が今年84歳になる橋本京一先生です。

 ごく少数で談話会にしようということで、初めてのことだから私の友人10人に呼びかけたところ、うわさを聞きつけどうしてもという人も参加することになり、14名の談話会となりました。14人となれば手ごろな部屋がないので、まだ完成していない新しい職員室を使わせていただくことになりました。先生は84歳とは思えない体格でいらっしゃいます。声もはきはきと張りがあって聴き取りやすく、体中から健康であることがにじみ出るようでした。

 若さを保つのは、よく噛むこと、よく歯磨きをする2つが大切であるとのこと。当の私はほとんど入れ歯というか、とりはずしのできないインプラントや差し歯。今では歯茎がだめになって固いものは食べられません。もう手遅れかと絶望的になってお話をうかがいました。

 参加者14名に先生は「8020」ということばを知っているかたずねられました。8020とは80歳になって20本の自前の歯を持つよう、口腔衛生に努めましょうという運動のこと。知らなかったのは私だけ。私たちの年代になると、ほとんどの人が知っておられると知り、はずかしくなりました。

 振り返ると私はこの50年間、知的障害のことしか考えが及ばず、「福祉オタク」と言われてもなんのことやら分からず、後で調べて激怒したこともありました。自身の健康を省みなかったことは今となってはもう遅いことは重々分かってはいますが、ともかく今日の先生のお話の中からひとつでも実行しようと覚悟を決めました。クオリティ・オブ・ライフです。

 大声でしゃべる、歌を歌う、3ヶ月に1回は検診する、口腔清掃と生活習慣の改善と・・・なーんちゃって。三日坊主かも。

 いつも使っている歯ブラシを持参するようご指示があったので、お弁当をいただいた後、先生のご指導のもと、みなで歯磨きをしました。「ブクブクパッ」ではなく、お茶を含んで「ブクブクゴックン」とそのまま飲み込むのです。先生は「おいしかったお弁当が全部胃の中に入って全部栄養になりますよ」といわれます。「口腔は歯磨きによって清潔になり、細菌は増えませんよ」とも言われました。私は私の意識改革から始めなければなりません。

 余談ですが、お弁当は地域のボランティアさんに作っていただきました。何だかとてもおいしくて、地域の人と仲良くなれた嬉しさと相まって今日の昼食は格別、感謝です。

2006年12月3日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

1年ぶりにあけぼの学園職員との親の同窓会といいましょうか、有志が集まって語り合う会が行われ、20人ほどが参加しました。職員の中には名古屋市職員を定年退職し、ヘルパーや民間の介護職員をしている人も何人かおられ、みなさん若々しく活躍しておられます。中には東京からかけつけて下さった方もいらっしゃいました。その人は私の息子佳孝を覚えていて下さいました。

「お母さん、小さくなったねえ!」ということばに「あたりまえでしょう。私もう78歳ですもの」
と言い返す瞬間、目の前に40年前の風景が彷彿と浮かび上がります。

 当時、名古屋市内に重度の子どもたちが入所する施設は皆無でした。親たちの運動で、精神薄弱児入所更生施設「あけぼの学園」の中に重度棟が開所されました。当時は重度の知的障害児に対してどんなケアを行ったらよいのか資料も先例も名古屋にほとんどない状態です。そこに初めて勤務する職員は大変でした。自然、開所当時の思い出話になります。

 皆さん「あのときは辛かった」とは言いません。「あのときは面白かった。あれが原点となっていまでも知的障害の福祉関係の職員として続いている。」「あの頃が忘れられず、退職してもヘルパーやボランティアをやっている。」など、もみくちゃの笑顔と共に、ありがたい言葉が次々と湧き上がってきます。

 親の近況報告では、ご主人を亡くしたり、あるいはご病気であったり、いろいろお世話を続けていただいていた先生が突然心臓麻痺で数ヶ月前に亡くなったり、あるいは最愛の子を亡くしたりで
いろいろな出来事がそれぞれの人生にありました。

 障害者自立支援法も話題になります。今、成人の入所施設にいる人、通所を利用している人様々です。が、みなさんたいへんな変革に驚き、今の福祉のありようにいろいろな疑問をもたれていました。特に、障害程度区分の認定手続きで使用される106項目の内容には納得がいかないという意見が大半を占めていました。延々と果てしなく話は続き、お店の人に怒られそうなので、ともかくここをお開きにして二次会になりましたがそこではどんな話がでたでしょう・・・。

 私はこの方たちと知り合い、ひとつの目標に向かって励ましあうことができた人生をほんとうに感謝いたします。私は帰路につきながら、ひたすら今の名東福祉会の職員たちが今日この頃の難関を乗り越え、30年、40年後に、笑いながら思い出話をしてくれるよう祈るばかりでした。

2006年11月28日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

 11月23日、名古屋市昭和区役所講堂で行われた社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会と社会福祉法人名古屋手をつなぐ育成会が主催する「知的障害のある人の成年後見を考える」セミナーに参加いたしました。

 開催あいさつの後、講演「知的障害者の成年後見の社会基盤づくり-現状と課題-」というテーマで、全日本育成会中央委員会委員長の佐藤彰一氏(弁護士)より講演をいただきました。

○成年後見制度のねらいは何なのか
○制度の概要
○成年後見をつけると役に立つ具体的事例
○成年後見制度を利用するときに考えるべきポイント
を中心に、具体的事例をあげて説明されました。

 今まで何度も後見制度の説明を聞きましたが、今日ほどすなおにわかりやすく理解できたことはなかったと思います。

 セミナーの内容を端的に言えば、自分たちでNPOでも何でも良いから組織をつくるべきだということ。本当は親がなるべきだが、年の順でゆくと先に死ぬ。だから、信頼できる自分たちをいちばん知ってくれる人にやってほしい。ネットワークで後見人をつくるとよい。その地域地域でかかわりかたが違うから、その地で生かせるものを立ち上げるとよい。「親亡き後ではなく、親あるうちに」を何度も協調されていました。

 障害のある人の後見支援は長期間にわたります。財産管理だけではなく、生活支援もカバーする後見システムが必要となります。今こそ、若い親たちが立ち上がって作るよう努力してほしい。それが手をつなぐ育成会の使命だと思うとまで言われました。

 また、各市町村レベルで「バックアップシステム」や「コミュニティフレンド」をつくるべきだと強調されました。沢山の資料にもとづき、具体例をあげての説明の中でいずれにしても弁護士や司法書士はタダでやるわけにはいかない。報酬はきちっと払うべきだとちょっと言われました。もっともなことだと納得がいきました。午後からはシンポジウムと相談質問で、

○名古屋育成会理事長 仁木雅子氏
○愛知県弁護士会 熊田均氏
○名古屋市健康福祉局生涯福祉部長 長谷川弘之氏
○愛知県弁護士会 河内尚輝氏
○NPO法人PACガーデアンズ理事長 佐藤彰一氏

の各氏が発言、質問に答えられました。会場に参加した400人近い人々は満足して帰られたと思います。

2006年11月27日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

愛知万博開催の折、イタリアの音楽会に招待してくださった石川愛子さんが、イタリアの看護士さんとすばらしい日本のピアニストを連れて、今日、レジデンス日進に訪問してくださいました。

 四方山話のあと、デイサービスや居室をご案内したり、屋上をご案内しました。特にお風呂は日本風の木のお風呂なのでそれにいたく感動され、屋上庭園では驚いたり、四方が見渡せるので感動したり、奈々枝ガーデンではなぜか笑い転げておられました。

 デイサービスでは何人かの利用者と会話していらっしゃいました。両方ともチンプンカンプンでしたでしょうけれども、とても喜んでおられました。イタリアの人はとても日本が気に入り、ぜひ日本で働きたいと言っておられましたが、看護の仕事は日本語ができないと難しいのではと思いました。

 通訳が必要なのでアッという間に時間が過ぎて、おなごりおしくお帰りになられました。

 石川さんはバレー教室を開いておられますが、生徒たちにここを見学させたり、バレーを利用者に見てもらいたいと以前からおっしゃっています。自分のところの生徒たちに生涯を持っている人たちのことを小さいときから関心をもってもらいたい、誰しも障害を持つ可能性があるし、みんな人間として一緒なんだということを幼いうちに知ってほしいと思っていると石川さんは会うたびにおっしゃっています。

2006年11月21日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

日進市が図書館を新築するにあたり、市民から応募した検討委員の話し合いを傍聴できると聞き、私はぜひ参加したいと思い出かけました。傍聴という形でしたが日進市の行政を垣間見ることができました。

思い起こせば私は小学校1年から2年生に岐阜に住んだことがあります。東京から移って間もないころです。友達もいないので私は図書館に入り浸りました。手当たりしだい本が読めたお蔭で読書好きの子どもになりました。女学生の時代には夜遅くまで電気をつけて本を読んでいると親にしかられるので、ふとんの中に電灯を引き入れ、隠れて読書をするほど本が好きになってしまいました。大人となって本を3冊も出版できたのはその頃のおかげも少しはあったかも知れません。

それは別として、これからの日進の子どもたちの未来と高齢者のためにぜひ夢のある新図書館を建ててほしいと思いました。ゆったりとしたすばらしい設計はもうできているのですが、これから建設業者が決まり、新築のあかつきは運営する指定業者を決めなければなりません。

委員会の中では日進市が直営するほうが何かとゆとりのある運営がなされてゆくのではないかという意見が強かったように思います。それでも民間委託のよさもあるという意見も出て、結論はまだまだといったところでした。

委員会の意見では出ていませんでしたが、全国的には民間の業者に委託すると逆にサービスの質が下がるという不安があるそうです。民間委託すると個人のプライバシーが守られないかもしれないという不安があるという意見、福祉や教育だけではなく図書館の運営も民間に任せて大丈夫なのかという意見もあるそうです。民間の福祉を40年やってきた人間としてはなんだかおかしな議論だなあと思いました。

それはさておき、図書館は市民の宝島。日進市から立派な子どもたちがすくすく育つためにはみんなが行きたくなるような図書館がほしいものです。市民のひとりとしてこれまでこの問題に深く関心を持ってこなかったことを反省しました。

2006年11月13日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

いつも山口さん、藤本さんは屋上ガーデンの整備をせっせとやっていただき、聞くたびにどこかが変わっています。

今日は足助から買ってきたという自然木のテーブルと椅子が置かれて、風情は抜群。この椅子に腰掛けて四方を見渡していると、日進中が我が手の中の感じがしてきます。一度屋上へ上がってみて下さい。晴れた日はとにかくすばらしいです。

私はたった2株、ラズベリーを植えておいたのですが、ひっそりと赤い実がぶらさがっています。手を真っ赤にしながら実を摘み取り、家へ帰ってジャムをつくりました。

例によってむちゃくちゃな作り方。ビンの底に残っていたお砂糖をぶち込み、はちみつの残りもぶち込み、出来立ては熱くて食べられないので翌朝、利用者が働いているパン工房のパンにつけて食べたら、なんと美味しいこと!世界中のラズベリージャムも追いつかないすばらしい味でした。
いやいや、利用者が作ったパンがおいしかったのかな?どちらとも言えませんが、屋上のラズベリー、独り占めにしてごめんなさい。
実は私の片手に入るくらいのラズベリーの量だったので、皆様にお分けすることができなかったのです。来年をお楽しみに。

2006年11月6日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

愛知県体育館で始まっている「ふるさと農林水産フェア・秋と緑の収穫祭」に行ってきました。11月3日から5日までの開催です。会場は人で人で、歩くことさえ至難の業です。

愛知県下から野菜、果物を始めとして、土地の特産物が出店されています。じっくり見たら、愛知の特産が早分かりするのではないかと思いましたが、なにせ歩くのもままなりません。

ようやくたどり着いたのが食育ステーション。みなさん三つ葉のジュースやおからクッキーに気をとられ、試食コーナーは押すな押すなの盛況です。
その中で、「おふくろ栽培」という水耕栽培の農業と健康食品のコーナーがあります。「おふくろ栽培」とは、「おふくろさん」という袋の中に入れた有機肥料がたっぷり入った土と、水耕栽培を組み合わせた独自の水耕栽培です。水受け部分には素焼きの陶器を使います。実はこの水受け皿を新案製作したのが当名東福祉会の三上陶芸部長です。これからの名東福祉会の就労部門を担う陶芸部。将来が非常に楽しみです。

私はビニールハウスの中でとれた野菜なんて・・・と実は思っていたのですが、害虫は薬ではなく、丁寧に手で捕り、いつも根気よく、手を掛け目を掛けるのがこれからの農業のあり方であることを実感しました。故郷、愛知の良さを若い人たちが本気で取り組もうとしているのを肌で感じることができます。このほか、木製品、草木染コーナー、布ぞうりづくりも沢山の人だかりです。ジャンボ五平餅、たこやき、ジャンボ焼肉は長蛇の列でした。

こうした地道な活動を名東福祉会が行っていることを会員の皆様にも是非知っていただきたいと思います。

2006年11月4日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

10月25日に豊明市心身障害者(児)福祉団体連合会の主催で豊明市文化会館ホールにて「落語と講演の会」があり、豊明手をつなぐ育成会からご招待がありました。

「兄貴は楽しい?ダウン症」というテーマで、落語家「露の団六」の舞台が始まりました。落語は高座を設け座布団を敷いて着物姿で、講演は着物姿ですが演台で立って講演という趣向でした。

神戸大学教育学部在学中に落語を聴いて感動し、弟子入り。以後、落語のほかラジオ番組やニュースキャスター、大学の講師としても活躍、インテリの噺家です。

話を聞いていて、我が息子たちと共通点が多々あり、どうも心底から笑えません。話の奥にある苦労を私は感じてしまいます。私の長男は左半身マヒ、最重度の知的障害で、ダウン症の方たちの明るさは持っていません。明るいノリオさんの話ばかりで母親のことはあまり聞きませんでしたが、その時、母親はきっと・・・と私は思えてしまいます。

私の次男は小学校5年生の時、私が授業参観に行くと座布団の上で落語をやっていて、私は大いに驚きました。また、同じように教育学部出身ですが、今はコンピュータの会社と当名東福祉会の理事長を兼務し、経営の難しさを実感しています。

大人になってからの立場は全く違いますが、兄弟に障害者がいると、子どものころ味わった様々なことが考え方の根底にあると私は思うのです。好むと好まざるとに関わりなく、生まれる前から兄弟の存在は運命づけられ、何があっても、そういうもんやと割り切って生きて来ざるを得なかった。そしてこれからも。

さて、「あほやけど、ノリオ」という著書。ダウン症のアニキを持って~を早速読んでみましょう。

※読み終わったら本棚においておきますから見てください。

2006年10月29日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

レジデンス日進は開所からもうじき3年を経過します。
3年たって、利用者をあたたかく包んできた桐でできた廊下や、手作りの木の椅子はいろいろなところに傷がつきました。

利用者がパニックを起こすからと言い切ってしまえばそれまでですが、これまで職員たちは「問題行動」が起きないような工夫をいろいろとしてきました。
どんなささいなことでもできるだけ「ヒヤリハット」で報告しあい、利用者が他の利用者をつきとばしたりすると、事故報告を詳細に記録しあってきました。職員たちは反省しあい、少しでもよい状態にすべく、気持ちをひとつにしてがんばってきました。

建物が良ければよいほど、いろいろ気を使わなければなりません。立派な日本家屋ほど見えないところで大変です。

レジデンス日進には毎日見学者の方がいらっしゃいます。みなさんは桐の廊下、桐の壁、珪藻土などに驚かれます。
ほとんどの人が掃除はどなたがやっているのですか?と聞かれます。掃除機は? ガラスふきは? 雑巾がけは・・・
毎日のように掃除に来て下さる後藤さんとボランティアさんや、屋上の花の手入れをしてくれるお母さんたち、月1回の掃除に来て下さる若いお母さんたち。家族会や家族会役員の跡に掃除をしていってくださる家族会の人々。みんな善意で利用者さんたちの生活は成り立っているのですよと話してきました。
そうしたら、何と、月一度でもよければ掃除をやらせて下さいと一般の方からボランティアの申し込みがありました。私はとても嬉しいです。

そして思い出しました。
「人が建物を創る。完成した後は建物が人を創る」チャーチル。
「上質なおもてなしとは最高の施設・料理・サービス」ホテルオークラのベストACS。さぽーとNo595より。

2006年10月25日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

10月21日の土曜日。いつも名都美術館の入場券をいただきますが、今月は私の好きな堀文子先生の展示なので私は喜んで行って参りました。

なんて美しい絵なんだろう。本物の良さを捕らえ、真実が迫ってきて「絵よりも綺麗な絵」という奇妙なことばが頭をよぎりました。進むうち、画文集「時の刻印」より抜粋されたことばが目にとまりました。

「人は決して人だけから学びはしない。樹や草やつきや嵐からの教えで私たちは大人になるのだ。山に住み、草木と呼吸を合わせながら日々を送っていると万物流転のさだめが素直に我が身にしみるのである。生きるものはやがて死に、会うものは別れ、財宝も名判も仮の世のひと時の驕(おご)りであることが否応なく見えてくる今日この頃である。自分などもともとなかったのだ、心さえも妄想だ、捨てることだとしきりに思う年に私もなった。」とありました。

堀文子先生 ことし 88歳。私78歳。

あくる日、日曜日は愛知県豊田市の通所更生施設「観寿々園」が主催する観寿々(みすず)祭に行ってまいりました。友人二人を私の車に乗せ、制限速度を守ってグリーンロードをひた走り、予定より早く着きました。

17年続いた観寿々祭を本年で終わりとするとのことです。

時間前なのに、保育園児やギターや太鼓などのメンバーたちが練習していて、とてもにぎやかでした。観寿々園や夢やの手作り品も沢山並べられ、いつも人気の寄贈品もたくさん並んでいました。保護者たちも熱心に販売に力を入れていて、今年でやめるには惜しい気がしました。

施設運営は今後、ますます厳しく、経営者にとっては身が細る気がしますが、通所する人たちの笑顔、親たちの協力がこの難関を乗り越えると確信します。
来年は「夢やまつり」がデビューするかな?そんな期待を胸に描きつつ、次の予定があるので早々と失礼しました。

その後、日進手をつなぐ育成会「陶芸教室」に行って参りました。香具山福祉会館、工作質、木工や陶芸やその他何でも出来る工房でカマも釉薬もその他陶芸に必要な道具一式があります。部屋、その他一式、無料です。

この日は参加者がやや少なく、4名の本人、3名の母親、1名の友人と私。陶芸の先生は男性で、懇切丁寧に教えてくださいます。

私は時間の都合上、時間途中で失礼しましたが、日進市はいいなあ、これだけの会場と設備を無料で貸してもらえるのだもの。企画をきっちりすれば大したものになるなあと感じ入って帰りました。

私はメイトウ・ワークスを解説するに当たり、授産科目を何にしようかとあれこれ自分で体験してみて、陶芸を取り入れようと思い立ち、当時あった愛知県青少年公園の中にあった陶芸教室に通いました。そこも公立なので粘土は1kg500円。教授料、焼成料、その他かかりませんでした。私はいつも小物専門で人形や花瓶、小皿などをいくつも作って、「これならいける!」と勝手に思いました。今の理事長も別の工房に通い、以来30年、陶芸は続いています。

2006年10月23日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

問題行動を解決する介護に重点的な政策を

現在の障害者自立支援法では、入所施設を利用できる障害程度の区分判定は区分4から区分6(区分6が最重度の障害)となっている。「障害が重い人は入所施設」、軽い人は「グループホーム」という区分けがなされている。

障害が重い人が入所施設の利用者の中心になることには異存がない。だが、現在、障害の程度判定基準が知的障害を十分に考慮したものになっていないことを考えると、「障害が重い人は入所施設」という考え方にはいささか問題があると言わざるを得ない。

現在の判定では知的障害の場合、問題行動がある人が区分判定では大きな数値に判定される。判定に携わる専門官は、問題行動があるかないかが判定の決め手になるという。となれば、今後、入所施設の利用者は問題行動をもった人が利用する傾向となることは否めない。

もちろん、入所施設は高い専門性を標榜しており、問題行動の解決のためのプロフェッショナルになることを社会から期待されている。その意味では、入所施設が問題行動の解決のために環境を整備し、その技術を磨くのはあたりまえである。

ただ、問題行動を維持しているのはその人が生活している環境である。入所施設に移ればしばらくして問題行動が消失するかもしれないが、問題行動が消失したからといって、もとの生活場面に戻った場合に問題行動が再発しない保障はどこにもない。むしろ、問題行動は生活している環境で起こり、維持される。

問題行動を解決するための支援は生活の場で行うのが基本だ。すなわち、問題行動の解決の支援は、本人だけではなく生活環境そのものの変容も含まれるべきである。知的障害者の地域生活支援が成功するか否かのポイントは「重篤な問題行動をもった人は入所施設へ」という考え方を乗り越えるところにある。

ところが現在、入所施設から地域生活への移行支援は退所後1回でわずか5000円。交通費である。この単価ではインセンティブは働かず入所施設からの地域移行は促進されない。本来は、半年間などの一定期間、入所施設から地域生活への試験移動期間に遠隔的な介護や支援が行われ、それに対して支援費が入所施設に支給されることが望ましい。

問題行動は永続的な行動ではない。その人が現在生活している環境の変容と定期的なメンテナンスを適切に行えば問題行動を減少させたり緩和したり、他の望ましい行動と置き換えることが可能である。今、就労移行支援が脚光を浴びているが、今後社会福祉法人の施設において地域生活を維持し質の高いものに発展させていく仕事は施設に本来求められる仕事である。地域生活の場面で問題行動を解決し、QOLを維持するための介護(タスクフォース)に光をあててこそ、障害者自立支援法は地域生活を支援し、強固で利用者側に立った制度になる。

今日10月18日はレジデンス日進が主催する秋祭り。
午前中から用意を始め、テーブルをセッティングする人、ご飯を炊く人、秋祭りらしく秋の花を生ける人、雰囲気作りでポスターを書く人いろいろです。利用者もボランティアも職員もいっしょになって準備しました。

あっという間に出来上がったところで、施設の近所にあるチェコ料理の店「メイグリーン」からカレーやほたてのフライ、ソーセージなどが到着しました。
みんなできれいにお皿に盛り付け、サラダや福神漬けのラッキョの添え物までつけて美味しそうなランチセットができました。

昼食の後はデイサービスルームでビン倒しや輪投げなどの秋祭りの夜店に出るようなゲームで楽しみました。輪投げに入るとお菓子がたくさんもらえます。
その後、リズムに乗って体を動かし、疲れたところでお抹茶と和菓子が出ました。私はお抹茶の味を利用者にひとりひとり聞いてみました。
「飲むの初めてだけどおいしかったあ」
「おいしい」
などの声が圧倒的。あとは「にがい・・・」の一言や聞いても知らんプリの人たちでした。

その後みなさん各ユニットに帰ってくつろぎました。

レジデンス日進には少ないですけれど働くことが大好きな利用者がいます。
「今日はどうだった?」
と聞くと
「今、仕事がたくさん入っているので今日やれなかった分、明日がんばるよ」
と言ってくれました。こんなこと言ってくれる人はそんなにいませんが、何だかジーンときてしまいました。

長い間こういう仕事をしていて、いろいろな思いをします。悲しいことや心配することが多い中でたまに本人からジーンとすることばをもらうと、ああ、この仕事について良かったなと心底思えるのです。まだまだ修行が足りないので利用者さんにいろいろなことが起こりますが、利用者さんの笑顔が何よりも私を励まします。

2006年10月18日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

10月16日、愛知県手をつなぐ親の会津島支部の方々(16名)がレジデンス日進を見学においでになりました。

午前中はあゆみ園を見学され、午後からお見えになったのですが、お子様が小規模作業所に通所されている方が多い関係上、お迎えの時間があり、駆け足での見学となりました。

まず床がすべて桐であること、壁が珪藻土であること、テーブルや椅子が全部木製であることなどに驚かれ、全室が個室になっていることや、トイレ、お風呂に驚かれ、「いいな、いいな」の声がたくさん聞かれました。

屋上では家族会の丹精でバラやハーブの花が咲いているのを見て、「いいなあ」とためいきをつかれておられました。エレベーターでは全員入っても余裕があるので、嬉しそうに騒いでおられました。

デイサービスの見学を終え、質問も感想もお聞きすることができませんでしたが、ひとりのお母さんが「ぜひ、うちの子を入れてほしいがどうしたらよいでしょうか」と聞かれましたが、「ここへ来るまでには随分と時間がかかると思いますよ。できるだけ近くの施設と連絡を密にし、いざという時のために、普段から地域の施設に協力をし、いざというときのために備えておくとよいですよ。」と言って差し上げました。

老後の時を考えて子供のために少しでも早く安心できる生活を・・・という気持ちはよくわかるのですが、自分が年をとったら歩けなることを考えてほしいと思うのです。なかなか遠くの施設には行けなくなります。親も子供も元気な今は、何とか地域で自立した生活ができるようにすることを考え、何でもやらせてみてほしいと思います。母親がいなくても自分のことくらいは自分でやれるようになってほしいと願います。時間がなくて十分お話ができなかったことを残念に思いました。

2006年10月17日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

岩手県小岩井牧場の隣地に住む友人からので電話でご長男(43歳くらい)が亡くなったとのお知らせがあった。
どんなに驚き、どんなに悲しく思ったことか、お聞きする私も胸がいっぱいになる。

でも電話の声は淡々としていて、自閉というハンディをもった子供を授かったお蔭で、いろいろな人と出会い、いろいろな事を学ばせてもらったと感謝しているとのことばが続く。

私との出会いは、以前、彼女が横浜市に住んでいるときに彼女がグループホームを運営しているのを知り、私が訪問したことから始まる。
絵が描けて、音楽指導ができて、グループホームまで運営している主婦に一度会ってみたいと思い、訪ねたのがきっかけだ。
以来、名古屋にも来ていただいたり、雫石に移ってからも二度も私はおじゃましたりしている。
彼女が発行する会報は手書きの字や絵で埋め尽くされ、音楽だよりもとてもロマンを感じるものだ。私はいつも尊敬と羨望を持って会報を何度も読み返した。私のほうが年上だが、彼女と知り合えたことを深く感謝している。

彼女のご長男が突然亡くなられたことはどんな言葉をもってもおなぐさめできないのでは・・・と思うが、きっと立ち直ってまたいつものように、花の絵を描き、音楽をもって大勢の人の心を癒してくれるのではと期待している。雫石の八角形の音楽ホールがまた私においでおいでと言っているような気がする。

2006年10月15日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

家族会役員会報告

定例の家族会役員会が行われた。名東福祉会では1981年のメイトウ・ワークスの開設以来、利用者の家族会の役員と理事長が直接話し合う場を毎月1回設けている。今日の役員会の席上で、私は理事長として次の事を申し上げた。

第一番目は障害者自立支援法による、利用者の区分判定の結果が明らかになりつつあり、判定区分1~区分6まで非常に幅広い分布をしていることがわかったこと。

これまでは名東福祉会といえば障害が重い人や自閉症の人が利用している法人というイメージがあったが、今回の判定結果では判定上は普通の施設になったということだ。措置の時代では名東福祉会は重度加算(障害が重い人のために特別に加算される支援費)が多い法人であったために、障害者自立支援法で相対的に打撃を受けることは否めない。

第二は、ケアホームの設置を速やかに行わなければならないことが明らかになってきていること。

先日も、当方人の利用者のお父様がご病気で亡くなられたばかり。今後、親の高齢化の進展と共に、夜間ケアの必要性は高まることが予想される。また、判定によっては入所施設の利用ができない人が出るという問題が生じる。現時点でレジデンス日進を利用している区分1・2の人たちのためにケアホームを設置することは必須となる。

名東福祉会の利用者は現在150名前後。ナイトケアの対象者はレジデンス日進、グループホームを合わせて現在50名前後だが、利用者全体の50%を越える75名以上が利用できるようにしていきたい。さらに10年後には親の年齢の推移から全体の75%程度まで高めていく必要があるように思う。

場所については検討を要する。レジデンス日進と同一の敷地に建設することはバックアップの問題から安全で安心感があり、効率がよい。一方、名古屋市はニーズが高く、就労支援や地域生活支援センターとの連携を考えると質の高いサービスを展開できるが経営効率やコストの面で不利だ。十分に検討を行いよいものを開発して行きたい。

第三は障害が重い人のためのケアについて、技術や支援内容を量的にも質的に充実したものにしていきたいこと。

ただ、厳しい判定結果となっているため、良質なケアを提供するためには運営上の工夫も必要だ。具体的には直接処遇にボランティアの協力や参加を促して行くことが必要となる。ボランティアとはいえ無償でというわけではない。有償のボランティアとして戦力となっていただき、施設のケアの向上のために力を注いでいただきたい。

区分判定の如何にかかわらず、現実には名東福祉会の利用者は重度の知的障害が多い。このホームページでも書かせていただいたが、問題行動を少なくし、望ましい行動を増やしていくためには問題行動を起こしにくい環境設定が必要となる。

例えば自己刺激的な行動を行うような人に対し、腕上げやマッサージを行うだけでも様々な変化を期待できる。座位をとれない人に対して、本人に合わせた器具を製作し座位をとったり、背筋を伸ばしたり、からだをストレッチすることは必要であろう。歩行ができない人に対して一定時間、歩行のサポートをするだけでもQOLは高まることが期待できる。こうした支援は職員でなければできないわけではない。このタイプのプログラムは重症心身障害施設ではあたりまえだったが、知的障害者の通所授産施設ではこれまではあまり行われてきていない。

重症心身障害者のニーズのアセスメントを行い、しっかりとしたケアプランを立て、提供するサポート内容を明確に定義すれば、ボランティアにも直接処遇に参加してもらうことができる。もちろん義務ではないが、家族会の人にもこの人たちのケアにご参加願えないだろうか。従来から家族会には掃除やバザーなどでたいへんご協力いただいているわけだが、法人経営のあり方が激変した今、より効果的なご協力のあり方を模索していく次期にさしかかっていると思う。

今日のミーティングでも後半はみんなでわいわいがやがやとなったが、わが法人の家族会は実に熱意にあふれ、知的であり、批判すべきときは舌鋒鋭く、相手が理事長でも会長でもずばずばと批判を行うすばらしい家族会である。これが名東福祉会をここまで支えてきた原動力なのだと改めて確認できた一日であった。

手をつなぐ育成会の東海北陸大会に出席させていただいたので、一言なりともこの地の育成会の会員さんにも報告して時の動きを知っていただきたいと思い、日進市の手をつなぐ育成会の定例会に出席させていただきました。当日は15名の出席で、会長の報告や私の報告の後、それぞれが思っていることを発言しました。

日進市の育成会の会員のお子さんたちは大方の方が通所施設を利用している方で、ごく一部の方が一般の企業に就労している方です。話は今回の区分判定の話になりました。大部分の人が判定が軽すぎるということで今後の対応方法がどうなるのか、質問というよりも不安な気持ちを訴えておられました。

会員のみなさんのお子さんに自閉や知的障害があることは間違いありません。これまでも医師や相談所にそのように診断されてきました。学校も特別支援教育を受け、社会福祉のサービスも受けてきました。それが、一夜明けたら障害者ではないといわれたのです。本人が変わったわけではありません。不安な気持ちになるのは当然です。

障害があるこどもの子育てを懸命に行い、卒業した後まで学校の先生に応援を受け、作業所の職員やご近所様や働いている就労先の雇用主さんの理解と協力でなんとか今をつないでいるのです。その支援の輪があってはじめて「障害が軽減されている」のです。ハンディがなくなったわけではありません。

がんばってきた人が区分判定から一夜明けて障害者でなくなり、様々なサービス利用に制限が設けられてしまう。逆に、こどもをほったらかしにし、問題を助長するような対応を重ね、ますます孤立と問題を深めるような育て方をするとたくさんのサービスが受けられる。そんな理不尽なことがあっていいのでしょうか。

国は判定が不服な場合には不服申し立てをしてくださいといいます。でも、窓口に「なんとかなりませんか」と不服を述べても、頑として受け付けない姿勢だといいます。日進市の育成会ではすべての会員から同じような発言があるので、早急にまとめて市へ申し入れようということになりました。

2006年10月11日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

手をつなぐ育成会東海北陸大会が10月8日(日)、9日(月)に掛川市つま恋に於いて行われました。1500名ほどの人々が集まり大会を盛り上げました。大会のスローガンは「誰もが共に生き、育ちあい、支えあう地域づくり」です。

障害者自立支援法がこの10月1日から施行され、利用者負担の問題、障害者区分認定の問題が利用者側に十分理解されないまま進められているところなので、参加者の皆さんは一言も聞き漏らさないぞという真剣なまなざしでどの分科会場も熱気にあふれていました。

私は第5分科会「地域生活支援のあり方とセイフティーネットを考える」に参加しました。内容としては小松市育成会が法人化して新たに居宅支援事業を立ち上げたこと。通所支援や居宅支援事業をすすめるなかで、ヘルパー派遣で自宅で一人暮らしが可能になった52歳の男性の実例が紹介されました。その事例から自立支援法下での問題点や課題が浮き彫りにされました。

提言を聞いていて切実に思ったことは、どうしたら地域で生活を継続できるかということ。親や兄弟だけのがんばりでは限界があるので、地域での「支え」をつくらなければならない。それぞれの市町村で福祉のネットワークをつくる「市町村の福祉計画」こそ重要だと思いました。親はどうしても親亡き後のことを心配し、心を残しながら死んでいくものなのですが、わが子のことだけではなく少しでも地域の人々の支えの輪を広げていくように努める必要があると思います。今回の大会に参加できたことを心から感謝し、老いの身ながらがんばろうと思いました。

2006年10月10日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

またひとりメイトウ福祉会のお父さんが亡くなりました。
大変な自閉症のお子さんをずっと看てこられてどんなにか心残りであったろうと、お察し申し上げ、ただただご冥福を祈るのみです。お子さんはレジデンス日進でショートステイ中ですから、職員がお通夜に連れて行くものと思います。

お父さん、お母さんがお子さんより早く亡くなるのは当然ですが、いつも「我が子を見送ってからあの世に行きたい」という親の気持ちとは裏腹に、年の順で逝くのが常です。

だからこそ、私たち親はせめて親亡き後、そんなに手数のかからないように、ひとりで衣服の着脱くらいは自分でやれるように、大小便はひとりでやれるように、最低の身じまいができるように等々、なんとか教えたいと気遣うのですが、むなしい願いとなることもあります。

ですが・・・親さんたち!! この先、暗いことばかり想像していてはいけません。明るいことを考え、希望を持ちましょう。1000分の1、万分の1でも明るいことを念願していると、神様はきっと願いをかなえてくれますよ。

2006年10月5日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

心配していた雨も止んですっきりとした秋晴れの日、私は久しぶりにメイトウワークスの家族会に誘われて半田市の酒倉と酢の里の見学会に同行させていただきました。

始めは「エッ?福祉と関係ない」・・・と思いましたが、お母さんたちとご一緒できることがいいことだと割り切って出かけました。多少あなどりぎみだった酒倉も酢の里も結構見ごたえがありましたし、半田市の町並みも昔を忍ばせて立派な屋敷があちこちに残っていました。時間の関係上、新美南吉の生家ごんぎつねの里には寄れませんでしたが、その近くの「まんじゅさげ百万本」は見ごたえがありました。

日本の昔の文化に触れ、どうして今日の日本があるのか、途中、戦争があって日本はどうなったかということが思い出されました。

帰りのバスの中では、メイトウワークスを立ち上げたころの事を思い出しました。数名のお母さんたちとともに、かやふきんづくりに一生懸命になったこと、小さな陶芸釜でウサギやネコやライオンのはしおきを作ったことなどが思い出されました。ささやかでしたが、どんなに障害が重くても楽しく通って働ける場をつくるという共通の目標があり、ほんとうに楽しい日々でした。今から28年ほど前のことです。

温故知新ではないけれど、とても有意義な時間を過ごすことができ、メイトウワークス家族会に誘っていただいたことを感謝いたしました。

2006年10月4日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

10月1日はとうとう雨になってしまい、みんなの待ちわびたコロニー祭は残念ながら途中で中止状態でした。

何か催し物をする時は、お天気のことが気になります。晴れのときはスケジュールの進行、雨の時は会場の変更やお客様へのご案内と担当のスタッフは気をもむものです。当日は雨がパラつく中をパレードから始まりましたが途中でやむなく中止。後は売店、展示物、フリーマーケット等々、傘をさしながらみんなでゾロゾロと歩き、楽しみました。

広いコロニーの中を親子連れで歩くことは、晴れていたらどんなに楽しかったことでしょう。歩けない親子連れもあり、来年はどうなるのかなあと心に残りました。

今月の中ごろに、コロニー再編計画の説明会があるとのこと。障害者自立支援法の実施はいやおうなく今日10月1日から始まりました。障害者施設の変革が身近なところで起こってくるわけですが、3年後の見直しにむけて不備な点を見出し、しっかり意見を言えるようにしたいものです。

本人が困らないように地域の中で生きていくにはどんな支援が必要か・・・・、私たち親兄弟が本人に代わって勉強し、その行く末を見極めていきたいものです。

2006年10月2日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝

福祉改革 障害者福祉に活力が生まれる政策を

阿部内閣の所信表明演説が行われた。

注目すべきなのは年金・医療・介護に関する基本方針は「持続可能な日本型の社会保障制度」をつくること。
具体的には
(1)予防介護・予防医学に力を入れること。
(2)年金、医療、介護は持続可能な日本型の社会保障制度を構築する
(4)医薬、工学、情報技術を高め、経営効率の改善をめざす。
(5)大学9月入学制の導入とボランティア活動を促進する
という。

確かに、生活習慣病の予防に力を入れた医療は必要である。医療費や介護費を大幅に削減するだけではなく健康寿命を延ばす。
より効率的で質の高い医療や介護が実現するためには、最先端の工学技術や情報技術を医療や介護の現場に積極的に導入することも必要だろう。
ボランティアが増えることによって地域福祉が推進していくことにも異存はない。
問題は、それをどのような形で実行に移していくかだ。

技術革新や情報処理の技術開発は企業や大学によって行われる。介護の経営効率化は民間の福祉施設や福祉サービス業者が行うものだ。
行政はこれらの技術が民間において改善されることを後押しする役目だ。

障害者福祉現場においても介護技術は進展を見せている。
社会福祉法人が固有に有している介護技術、質の評価方法や利用者への公表方法について、積極的に検討することが必要なのではないだろうか。

障害者が地域でいきいきと生活するためには、障害者施設でのボランティア活動を積極的に推進するよう後押しが必要だ。
高校生が障害者施設でのボランティア活動を選択するような制度を検討していただきたい。

ロボットは生活空間の変化を人間よりも正確に把握できる。
それだけではなく、最新のロボットは利用者の脈拍や体温などの状況を様々なセンサーで把握することができる。
先日、レジデンス日進で行われた愛知県監査の際に、ロボットを導入することについて話題が出た。
監査指導室の担当者からは「将来、ロボットを職員数に換算するような措置がとられるのではないか」という私見が飛び出したが、ありえない話ではない。

単なる医療費や介護費の歳出を削減する方法は福祉現場の質の低下を招きやすい。
福祉現場が利用者にとっても就業者にとってもより魅力にあふれる現場となる決め手は歳出カットではない。
持続可能性を重視するあまり、医療や介護が縮小均衡することは避けなければならない。
工学や情報処理技術を積極的に導入することが可能な仕組みが必要である。

福祉現場にやる気と活力を生み出す源泉は創意工夫である。創意工夫は利用者のニーズに応えることによって醸成される。
福祉現場の創意工夫を後押しするよう、さらなる規制緩和、福祉サービスを利用する際の手続きの簡素化、スピード化を求めたい。