入所施設は地域福祉の効率性を高める

障害者自立支援法によって施設は大きく変わる。本来社会の中で働ける人は企業に就職する。工賃が少なかった授産施設は工賃が高くなる。入所施設の中だけで生活していた人が多様な日中生活を送るようになる。街の中で援護者とともに歩きながら余暇をすごす人もでてくることだろう。長い目で見れば、2006年3月が日本の障害者福祉の転換点と見られるようになることは間違いない。ただ、障害者自立支援法によって障害者の幸福が増大するかどうかは現時点では不明である。

 障害者自立支援法は障害者とその家族や施設関係者に大きな混乱を招くことになった。特に、短絡的ともいえる入所施設解体論が横行することは問題である。

 知的障害者の家族にとって、夜間ケアの必要性は切実だ。こどもが養護学校を卒業して10年も経過すれば、親は60歳近くなる。親が加齢するごとに夜間の生活の場が必要となるが、施設整備の補助金が強く抑制され、支援費単価が下がって運営もぎりぎりとなり、施設利用の自己負担が増加していくならば、入所施設に代わる新しい暮らしの場を造っていく道筋がない。

 どんなに就労移行支援制度をつくっても、それに乗れない重度の知的障害者が存在している。危機的な財政の問題からケアホームやグループホームのインセンティブが弱くなった。入所施設よりも魅力ある新しいくらしの場を提案できていないため、経営危機を迎えた入所施設からどこに逃げ出していいかわからない。単に利用者の現状の施設生活や、家庭での暮らしを苦しくしているだけである。

 障害者福祉は国民の負担を前提としたサポートの上に成立している。福祉予算を充実したものにしなければサポートは充実しない。福祉予算を充実させるには税収が必要である。その税は国民所得を源泉としているため、結局、障害者福祉を充実させるには国力を高めることが必要となる。

 国力を高めるには小さな政府が必要となるが、これは障害者予算の充実とバッティングする。この衝突を解消するためには、効率的なサポートシステムを開発することが必須だ。

 障害者本人の自己負担を減らすためにも効率化は必要だ。効率の悪い福祉サービスによって自己負担が増加することは、利用者からも社会からも批判を受けることになる。

 では、効率の良い福祉システムとは何か。限られた資金で利用者のニーズを満たすためにはバランスの良いサービス提供を行うことが必要で、なんでもグループホームが良くて入所施設が悪いというわけではいということだ。

入所施設はグループホームよりも効率が良い。
企業が共同で設立する就労継続支援の方が授産施設よりも効率が良い。
一法人一施設よりも多施設経営のほうが効率が良い。
各施設が単独で地域生活支援を行うよりも地域の生活支援センターが担当する方が効率が良い。
施設が単一機能から多機能化することは効率が良い。
職員研修は複数の施設が共同で行う方が効率が良い。
給食は共同の給食センターを持つほうが効率が良い。

 各事業の特性を生かし、多様な事業を組み合わせ、最大のニーズを満たすとともに、生産効率も最大に高める努力が必要だ。
特に効率性が優れている入所施設が多機能型になり、地域福祉の核となることが重要である。

 市町の福祉計画は一朝一夕ではできない。絶え間ない改善が伴う。市町の障害福祉担当者と障害者事業者の会議が行えるようになったくらいでは、地域生活支援システムとは程遠い。

 安易な地域福祉システムは、結局、福祉サービスの利用者からも事業者からも地域住民からも不評を買う。名東福祉会は、短絡的な入所施設解体論ではない、利用者のニーズに従った地域福祉を実践してまいりたい。