久しぶりに地下鉄に乗りました。
女性専用口から入り、老人専用座席に座って、やおらあたりを見廻すと女性専用者は比較的すいています。
そのせいか、前の座席の若い女性がお化粧を始めました。
空いているとはいえ、人がいっぱいいるのにましてやまん前に私のようなものがいて、マジマジと見ています。
やおらまつ毛の化粧が始まりました。それあそれは丁寧に一本一本上向きになるようマスカラをつけるのです。
ゆれる電車の中でよくもまあ慣れた手つきで・・・。
新聞などでよくこの後継をけなしているのを読んで知ってはいましたが、実際にお目にかかることができました。
あたりをきょろきょろ観察している私の横は座席がひとり分空いていましたが、
そこへ音を立ててドカッと座った人があります。
見ると70歳前後かと見られる女性でした。
にこやかに私に話しかけてきます。
「私は毎日のようにこうやって地下鉄や市バスに乗って好きなところに出かけている。世の中はいろいろなことがあって楽しい。
今日は勉強に行く。歴史の話を聞かせてもらえる。」
と、こちらが聞きもしないのに一方的に話される。
私は心の中で、「老人が増え、ひまな人が増え、町に出かける人が増えてもお金を使わないのだ」と妙に感心しました。
さて、名古屋駅へ着くと新幹線まで送ってあげるといいます。
「階段を登るのたいへんでしょう。こう行くと楽です。」と手をとって導いてくれます。
私は少し用心深くなってきました。新幹線の入り口で別れようとすると、
「お昼ごはんどうするの?」
と聞かれる。
「時間があるので、うどんでも食べてホームへ行きますわ。」
というと、
「美味しいうどん屋さんがあるから一緒に行こう」
と言ってくれます。ままよ、なんでも経験しようと思って導かれるままに店に行きました。
ざるうどん550円を彼女が注文し、私はおろしうどんを注文しました。とても美味しいうどんでした。
食べながら彼女は一方的に自分のことばかり話して私には何も聞きませんでした。それが私は一番ありがたく、
ついうどんをおごる気持ちになってしまいました。
うどんを食べ終わると、また新幹線乗り場まで送ってくれました。
彼女の歳はちょうど私より10歳若く、亡き夫の年金で暮らし、勉強が大好きで筆記したノートも見せてくれました。
そして暇さえあれば町を歩いているとのこと。
こんな人が今はいっぱいいるのだ・・・と考えていると、
「今日はお年寄りのために役立って、こんな嬉しいことはない。おまけにうどんまでごちそうになって
私は今日は良い日でした。サヨウナラ」
といって別れて行きました。
私は私で老人席に座ったばっかりに、思わぬ体験をすることができ、何事も無く無事にお別れできてほっとした気分です。
そして、やりたいことがいっぱいあって、毎日忙しく動けるしあわせをかみしめました。