ああ、仕事を続けてきてよかったな

このごろ、福祉の世界は様変わりしています。
どうしてこの世界に入ったのか・・・を最近考え込むことが多くなりました。

長男が高熱を出し、そまま熱が下がらず国立病院入院に入院したことから始まったことがきっかけでした。
長男は入院してもなかなか高熱が下がらず、大発作を起こしましそのまま半身不随となりました。
重い障害をもったわけですが、なんとか生きてほしかったから・・・とそのころのことを思い出します。

中日新聞の「中日よろず相談」に駆け込み、そのころ相談者になっておられた名古屋大学の堀要先生とお会いしました。
先生は、これからは何かとこの人に相談するようにしなさいと、村上英治助教授を紹介してくださいました。
お二人とも亡くなられましたが、日本の自閉症治療やカウンセリング技術の発展に多大な貢献をされた先生です。

何も福祉の制度がなかった時代です。
そのころはリハビリテーションとはいいません。毎日、名古屋大学病院のマッサージに通い、ひたすら生きていてほしいと願う毎日でした。
そんなときに、何も表情に変化がなかったわが子がチラッと見せた目の輝きだけで私は生きていくことができるようになりました。

何十年もたった今でも、物言わない人が私を見るとき、心なしか目が変わります。
ものが言える人はいろいろ私に言いかけてくれます。そんなときが
「ああ、仕事を続けてきてよかったな」
と思うときです。

人のお世話をすることはたいへんです。一緒に歌を歌っているときですら気はゆるせません。
トイレ、薬と走り回ってもみんなありがとうとはいいません。
利用者の人たちに懸命の支援を行ったとしても、むくわれることはわずかです。
でも、そうであるからこそ、ほんの些細で見逃しそうな変化であっても、私たちに大きな喜びをあたえてくれるのだと思います。
そうした小さな積み重ねが今日の福祉を築いてきたのだと思います。

心臓手術をして7年。お医者さまは5年くらいで再手術が必要だとおっしゃっていました。もちろんあの手術を受ける気力も体力もありません。いつまでこの心臓はもってくれるのやら・・・。

生きていることはつくづくすばらしいことだと思います。
せっかく私たち日本の人たちみんなで築いてきた医療や福祉が灰じんに帰すことのないよう、祈るばかりです。

2007年3月15日 | カテゴリー : ななえ日記 | 投稿者 : 加藤 奈々枝